ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

アベサギノミクス 2本の矢

 国交省の建設受注統計のデータ改竄の件。デモクラシータイムスを見ていたら、経緯を示す年表が出ていてわかりやすかった。これに少々手を加えてみる(赤字の部分は当方が挿入したもの)。

「森友」赤木さん訴訟 卑劣幕引きの国は統計もごまかし WeN20211218 - YouTube

※時期不明  調査票書き換えを都道府県に指示
2012年12月  第2次安倍政権発足
 13年 4月  統計方法変更で二重計上始まる
 18年12月  厚生労働省の「毎月勤労統計」データ改ざんが発覚
 19年11月  会計検査院国土交通省の書き換え問題指摘
 20年 1月  都道府県への書き換え指示止め、国土交通省自ら書き換え
 21年 4月  書き換え止め、二重計上解消
    9月  会計検査院が報告書公表
   12月  問題発覚

 太字部分の国交省による都道府県への調査票の書き換え指示がいつ始まったのかはまだ公表されていない。しかし、もしこれが、2012年12月のアベ政権発足をきっかけに始まった(二重計上は年度の切り替わりの4月から始まっている)とすれば、あまりに話がわかりやすすぎて、あっけにとられる。アベノミクスは、うまくいかないのがわかってからデータの捏造をはじめたのではなく、最初から粉飾捏造の意欲満々だったことになる。アベノミクスサギノミクスとでも呼ぶのがふさわしい。

 そこで、思い起こすのが、アベシンゾー元首相が、厚生労働省の「毎月勤労統計」の不正が一般に知られるようになった2019年2月、参院予算委員会で、大見得を切ったあの場面である。「国会ウォッチャー」さんの動画を拝借させていただく。

国会ウォッチャー on Twitter: "安倍晋三 首相(当時)「まるで私たちが統計をいじってアベノミクスをよくしようとしている、そんなことできるはずがないじゃないですか。そんなことできるはずがないんですよ」… "

 「統計をいじって(アベノミクスを)よく見せる」という粉飾、そんな「できるはずのないこと」、やってはならないことを実際にやってきたのがこの政権である。

 3日前、弁護士の明石順平さんは、「アベノミクスの3本の矢」というのはウソで、ほんとうは「異次元の金融緩和」と「異次元の統計操作」の2本の矢だとTweetで喝破した。「異次元の統計操作」はこの国の根幹を想像以上に蝕んでいる。

明石順平 on Twitter: "異次元の金融緩和と異次元の統計操作がアベノミクス
異次元のコロナ対策がアベノマスク… "

 では、「異次元の金融緩和」の方はどうか。米連邦準備制度理事会FRB)は12月15日、量的緩和の終了時期を来年3月に前倒しすると発表、来年中に3回の利上げを進めるとの見通しを示した。イギリスも、イングランド銀行が16日に政策金利を年0.1%から0.25%へと引き上げた。潮目は変わり、コロナ下で続いてきた金融緩和策は急速に縮小されようとしている。一方、この日本は、アベノミクス以来の大規模緩和は新型コロナによってさらに一段ギアが上がり、出口はいっそう見通せなくなっている。この「超」がいくつも付く「金融緩和策」を日銀はどうするのだろうか。
 12月18日付朝日新聞にその記事がある。

動けない日銀、緩和縮小に向かう米欧との差が鮮明に 暗雲の兆しも:朝日新聞デジタル

 …米国ではこの先の利上げを見込み、長期金利が上昇。日本は大規模緩和が続き、今後も低金利が見込まれるため、より高い利息を得られるドルを買う動きが強まり、円安が進んでいる。ニッセイ基礎研究所の上野剛志・上席エコノミストは「今後、さらに円安になる可能性がある。円安で輸出企業の収益は改善するが、輸入企業の負担が増え、商品に価格転嫁されれば家計の負担も大きくなる」と指摘。賃金の上昇ではなく、コストの上昇による「悪い物価高」で、個人消費が落ち込み、国内の景気回復がさらに遅れることが懸念される。

 欧米の中央銀行が相次いで金融緩和の縮小や利上げを打ち出すなかで迎えた今回の日銀の金融政策決定会合。会合後に記者会見した黒田東彦(はるひこ)総裁が繰り返し訴えたのは、金融緩和を続けていくことの意義だった。
 黒田氏は日銀が政策目標にしている消費者物価の上昇率について、日本と米欧の違いを強調。携帯電話の利用料金の引き下げなど一時的な要因を除いても、日本の物価上昇率の実力は「0・5%程度」であるとし、「日銀の目標は2%達成に尽きる。2%にはまだ相当遠い」とした。
 黒田氏は、欧米のように賃金が上がっていないことも問題視。「単に物価が上がればいいのではなく、賃金が上昇していく中で物価(上昇率)が2%に収斂(しゅうれん)していくことが望ましい」と訴えた。そのうえで「経済活動が活発になり、企業収益と雇用が増え、賃金が上がっていく好循環になるよう金融政策として最大限の努力をしていく」とした。
 しかし、日本だけが大規模な緩和を続ければ、円安ドル高がさらに進み、原油などの輸入品のコスト上昇を通じて企業や家計の負担が重くなる懸念もある。だが、黒田氏はこの点についてもデメリットは小さいと主張。「欧米の金融引き締めで必ず円安になるとも限らない。仮になっても、現在の状況をみると円安はむしろ我が国経済にプラスに作用する」と述べた。輸出企業や海外子会社の収益が増え、日本企業の業績を改善させるという。
 だが、足元では黒田氏が描く好循環が生まれる兆しは乏しく、むしろ「悪い物価上昇」の傾向が強まっている。
 黒田氏がカギにあげた賃金(実質指数)は9月、10月と2カ月連続で前年の水準を下回った。政府も企業の賃上げを促すため、法人税の優遇税制を導入する方針だが、効果は見通せない。日本企業の約6割が赤字で法人税を払えておらず、優遇の恩恵を受けられるのは一部の企業に限られるからだ。
 賃上げの行方が不透明な中、企業の間で取引されるモノの価格が急上昇している。11月の国内企業物価指数は前年同期比で9・0%上昇し、比較可能な1981年以降で最大の伸びとなった。原油などの資源高と円安が主な原因だ。前年同月を上回るのは9カ月連続で、上昇は資源分野にとどまらず、飲食料品など幅広い分野に及び始めている。

 企業が仕入れコストの上昇を商品価格に転嫁できなければ、企業収益は圧迫され、賃上げの原資も減る。一方、賃上げが進まない中、価格にそのまま転嫁されれば、個人消費が冷え込むことになりかねない。そんな悪循環への警戒感が強まっている。


 デフレ、デフレと言われてきた日本だが、食料品や生活用品の値上がりは各方面にじわじわと広がっている。「スタグフレーション*」などという語は久しく耳にしない、1970年代の歴史用語だと思ってきたが、どうも様相はそれに近い。
* スタグフレーション(stagflation):stagnation(停滞)とinflation(インフレーション)の合成語。経済活動の停滞(不況)と物価の持続的な上昇 が併存する状態。

 12月17日付読売新聞の記事のトルコの様子と日本の姿が不気味に重なり合う。

トルコの惨状、人々の生活は「もう限界」…通貨安におびえる新興国(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

トルコの惨状
 今のトルコの「惨状」が、自国通貨安のリスクをあらわにしている。
 「キッチンペーパーが2か月余りで約2倍の価格になった。トルコの人々の生活はもう限界に近いところまで来ている」
 トルコ・イスタンブールで働く邦人駐在員は同情の声を発した。ここ数か月で急激に物価高が進み、11月の消費者物価指数は前年同月比21・31%の上昇率を記録した。
 インフレの元凶はトルコの通貨リラの暴落だ。今年1月、1ドル=7リラ台だった。それが今では1ドル=15リラ台に下落している。ドルに対しリラの価値は、ほぼ半減した。
 原油を筆頭に国際的な商品はドル建てでの取引が多い。対ドルでリラが下落すると、これまでより多くリラを払って買わなければならない。輸入品は高くなり、インフレが加速する。
 トルコの場合、金融政策の混乱が火に油を注いでいる。インフレを抑えるには、中央銀行による利上げが定石だ。しかし、景気重視のエルドアン大統領の強い要求に従い、トルコ中央銀行は今秋、利下げを断行。金融政策の常識を覆す決定に、世界の金融関係者は驚いた。当然、インフレは収まるどころか、逆に加速し、リラの下落に拍車を掛けた。トルコ中銀は、16日にもさらに利下げした。


 アベノミクスからの脱却、統計改竄、そしてまた、赤木さんの裁判での真相究明…と、問題が露わになっても次々と回避されていくこの国。なおもアベ政権時代の数々の刻印を正視することなく、このまま堕ちていくのだろうか。




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