ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

腐敗国家

 今日は手短に。
 昨日12月15日、森友の文書改竄問題で亡くなった赤木俊夫さんの妻・雅子さんが、真相究明を求めて起こした損害賠償請求訴訟は、国が一転して請求の受け入れを明らかにし、裁判自体が終結することになった。「認諾」という法律用語は初めて知った。しかも、1億1千万円という賠償額は、「額が低いと国はさっさと払って幕引きするので…」と、原告自身が高額過ぎることを認めていた金額である。これは、事件の詳細を明かすことによる「損失」と天秤にかけると、こっちの方が「安い」ということなのだろうか。事件隠匿料に税金1億1千万円。そして、実質、誰も責任をとらない、とらせない…。底知れぬ恐ろしい国。
 国の「認諾」というこの判断自体の不当性を問えないのだろうか。これでは、隠匿したもん勝ちで、被害者は国民全体ということにならないか。

 12月15日付毎日新聞の記事より。

赤木雅子さん「国はひきょう」 改ざん巡り夫自死 裁判、突然幕切れ | 毎日新聞

<従前略>
「認諾します」。この日午後2時から大阪地裁で開かれた非公開の進行協議。開始直後に国側の代理人が立ち上がり、雅子さんや裁判官らに向かって請求を全面的に受け入れると申し出た。
 本来は双方の主張の整理をする予定で事前の擦り合わせもなく、唐突な方針転換だった。雅子さんの代理人弁護士は「不誠実で信義則に反する」とその場で抗議。雅子さんも「また夫を殺すんですか」と訴えたが、請求通りの賠償金を全額支払い、訴訟を終える国側の申し出は認められた。

 国はこれまで、赤木さんの死と改ざん作業などの因果関係について争う姿勢を続けてきた。しかし、この日提出した書面には「赤木さんが強く反発した改ざん指示への対応も含め、精神疾患を発症し死に至ったことについて責任を認めるのが相当」と記述。自殺との因果関係を初めて認めた。
 しかし、協議後に大阪市内で記者会見した雅子さんは「ふざけるなと思った。ずっと闘ってきたのに惨敗したような気持ちでいる」と涙ながらに語った。最愛の夫が死に追い込まれた原因と経過を訴訟で明らかにしたいと訴え続けてきたからだ。「お金を払えば済む問題じゃない。なぜ夫が死ななければいけなかったのか知りたい、そのための裁判だった」と強調した。

 雅子さんは提訴した2020年3月以降、「安倍・菅政権」の不誠実な対応に翻弄された。赤木さんが改ざんの経緯を記した「赤木ファイル」は、裁判所から提出を促されるまで1年以上にわたり存在の有無すら明らかにしなかった。
 雅子さんは新たに就任した岸田文雄首相に宛てて、「夫が正しいことをしたことに対し、財務省がどのような対応をしたのか調査してほしい」と手紙を送付。「岸田首相なら聞いてくれるという感覚がある」と語っていた。
 真相解明を期待していた中で再び突き放された雅子さん。賠償請求額を1億円以上と高額にしたのは、認諾させないためだったが、それでも国は裁判を終わらせることを選んだ。雅子さんは「一番ひきょうなやり方で裁判を終えられてしまい悔しくて仕方ない。夫に何と報告したらいいのか……」と肩を落とした。

<以下略>

 そして、今また、国の基幹統計の新たな改竄の事実が浮上している。

「すべての数字を消す」国が指示 消しゴムで書き換えた統計データ:朝日新聞デジタル
書き換え「慣習継承」 一斉点検でも発覚せず 国交省、統計二重計上 | 毎日新聞

 政策判断の根拠にする統計データを消しゴムで消す国家なのだ、この国は…。その言い訳が「悪意はなかった」(だから、いいだろ)と?

 トルストイ『文読む月日』の12月15日のくだりにはこうある。

 (一) 真実はそれ自体善ではないが、それはいっさいの善にとって不可欠の条件である。
 (二) 嘘にも、初めから嘘とわかっていながら、嘘を言うほうが自分に有利だから言う意識的な嘘もあれば、言おうと思ってもどうしても本当のことが言えないときに、心ならずも言う嘘もある。
 (三) 迷妄だけが人為的な支持を必要とする。真理は自存自立するものである。
……
 (六) およそ迷妄は、ただ一定期間続くだけであるが、真理はいかに攻撃され、人々から隠され、詭計や詭弁や遁辞や、その他あらゆる虚偽に取り囲まれていても、あくまで真理である。
 (七) 絶えず真実を行ない、語り、考える術を学ばねばならない。それを学びはじめた者だけが、われわれがいかに真実からかけはなれているかを理解するであろう。
 (八) 嘘はあらゆる実生活上の事柄に関しても有害である。たとえば古いものを新しいと言って売ったり、欠陥商品をそうでないように見せかけて売ったり、…。しかしながらそんなふうな嘘は、精神的事柄に関する嘘と比べたらなんでもない。…正しいもの、善良なものを罪深いもの、邪悪なもののように言ったり、等々…そうした場合の嘘こそ、最も重大な悪なのである。
 (九) 罪のない人間、完全に正しい人間は一人もいない。人間の違いは、ある人は全然罪がなく正しい人間で、ある人は罪だらけ、不正だらけの人間といったものではなくて、ある人はできるだけ罪のない正しい生活をしようと努力しており、ある人はそうした努力をしないという点にあるのである。

(北御門二郎訳『文読む月日(下)』、ちくま学芸文庫、412-414頁)


<追記>
明石順平さんのTweetに深く同意する。
明石順平 on Twitter: "「アベノミクス3本の矢」なんてウソですからね。ほんとは2本しかありません。

異次元の金融緩和と異次元の統計操作。これがアベノミクス2本の矢です。"

<追・追記>
赤木さんの抗議文はこちら。
【抗議文全文】夫は国に2度殺された…赤木雅子さん、森友改ざん「悔しくて仕方ない」:東京新聞 TOKYO Web




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