ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

晩秋に 何を思うや 小池知事

 最近表舞台からすっかり姿を消している東京都の小池知事。「過度の疲労」を理由に2度目の入院をし(10月27日より1週間)、11月2日に退院、それから2週間以上自宅療養を続けていたが、21日(日)ようやく公務に復帰すると伝えられた(18日夕方の記事)。公の場に姿を見せるのは約4週間ぶりになるとのこと。

小池東京都知事、21日に公務に本格復帰 4週間ぶりに公の場へ:朝日新聞デジタル

 しかし、18日の早朝にはスポニチから「小池都知事が辞任検討」という記事が配信されていた。その日の夕方に「公務復帰」の発表をしているので、ガセネタというよりも、かねてより早期の国政復帰を願望しているという噂の小池都知事によるアドバルーンか何かかと思ったが、どうもそういうことではないらしい。

小池都知事が辞任検討、肺疾患の長期治療専念か 30日本会議の所信表明で進退語る?― スポニチ Sponichi Annex 社会

 19日「一月万冊」でジャーナリストの佐藤章さんは次のように解説した。

独自取材・小池百合子都知事復帰説に疑問!都庁に確認したら21日に知事が来るのはわずか数分の可能性。病気隠し&健康アピールのためのセレモニーか?元朝日新聞・ジャーナリスト佐藤章さんと一月万冊 - YouTube

 FNNプライムオンの記事(21日より公務復帰)は18日の午後4:57に出ていて、これが一番最初ですね。これを追いかけるように、6:53にスポーツ報知が「小池知事の重病説を東京都が否定、事実ではまったくない、と。読んでみると、

小池氏の入院を巡って一部では、長期の治療が必要な肺疾患を患っているとの報道もあったが、政策企画局総務部総務課の担当者は「病気うんぬんは事実では全くない」と否定。「重病、癌(がん)だったのではないかとの問い合わせもありましたが、正直我々はなんでそんな話になるんだと思っている」と報道に驚いた様子だった。
 また、「当初から過度な疲労と発表していた。今回も『過度な疲労が回復した』とお医者様が言っている。信用していただいて大丈夫です」と強調した。

小池百合子都知事の”重病説“を東京都が否定「事実では全くない」 : スポーツ報知

 それから同じ日の20:21(午後8:21)に日刊スポーツが同じような報道をしているんですよ。…で、最初に報道したFNNプライムとスポーツ報知、日刊スポーツの3つを並べてみると、底流には辞任説を打ち消したいという意図が見えるんですね。FNNには辞任云々の話は出てこないけど。
 政治家にとって、辞任説が流れるというのは非常に困った事態で、素早く打ち消しておかないとまずいという判断があると思うんですよね。それがきっかけとしてまずあるんじゃないかと。つまり小池都知事が何はともあれ公務に復帰する、そのかたちを見せようと、病気の軽い重いは別として。何でそうしたのかというと、辞任というのがまず先に(噂話でなく)事実であるように報道されてしまったからなんです。
 最初にこれを伝えたのは18日のスポニチで、午前5:31に「小池都知事が辞任検討、肺疾患の長期治療専念か 30日本会議の所信表明で進退語る?」という見出しで配信してますね。これ重要な記事なんですよ。辞任については、僕も含めて、重病であれば辞任につながるのではないかという話はしてきましたけど、スポニチは「辞任検討」と打ってるんですよ。これ真実だとしたら特ダネですよ。これ読んでみると、「都の職員は「周囲の多くは当初、過労から来るメンタルの不調なのかなと思っていたが、最近になって長期の治療が必要な病気だと知りました」という」と、都庁の職員の証言が書いてあるんですよ。これはゆるがせにできない記述なんです。これ、普通の記者の常識からすれば、単なるフレームアップでは済まない、「 」付き引用のかたちで言ってるんで、非常に重いんですよ。で、最後に今月30日の都議会本会議で「所信表明が予定されており、約1カ月ぶりの公の場となる。出席した場合、自身の体調と進退についてどのような説明と発言があるのか注目される」となっていて、これもけっこう踏み込んでるんですね。
 東京都の幹部はね、この記事を見て「あっ」と息をのんだと思います。朝5:31の記事です。これはまずいと。これに対処するためにFNNプライムオンが午後4:57に、これとは全く反対の記事を載せて「公務復帰」という記事を打ち出しているんです。このあと、スポーツ紙が「重病説は全く事実でない」という記事を次々と出すと、こういう展開を見ると、真実はやっぱり重い病気なんじゃないかと。それを今知られてはまずいと、小池さん本人と周りは思った。だから、かたちだけでも公務復帰をと、それをどこかに流してもらおうと「耳打ち」した、そういう流れが想像されるわけです。

 それで、21日に公務復帰ということですけど、その「公務」とは何なのか。これをよく見てみると、第30回新型コロナウィルス緊急対策本部の開催について、という全国知事会の催しがあるんですけど、これにオンラインで出席するということなんです。まず不思議なのは、21日は日曜日で、なぜあえて日曜に「復帰」なのか。さらに言うと、翌22日月曜日、23日火曜日は勤労感謝の日だから、月曜を有休にすると三連休になる。まあ、これは措くとして、公務復帰をするなら、22日月曜か、24日水曜にするのが普通なのでは。どういうことかと思って、都庁の関係機関に電話して聞いてみました。そうしたら、日曜のこの全国知事会の会議は午前9時から午後12時半までやるらしい。けっこう長い。で、終わった後に平井本部長、鳥取県知事ですけど、Webによるブリーフィング(簡単な報告)をやるんです。で、これに参加する記者もいるんですけど、小池さんはいつ都庁に来るんですかって訊いたら、意外にも、正午くらいだって言うんですね。これ会議自体は9時から始まるけど、発言の順番があるから、全部出るわけじゃないってことなんです。で、正午頃に来て、どれくらい都庁にいるんですかって訊いたら、数分だって言うんです。そのためだけに都庁に来る、セレモニー感満載なんですよ。
 で、僕も行くつもりなんですけど、都庁からペーパーをもらったんです。行く人(記者)はいろいろ手続きとかがあるんですけど、記者の方は小池さんがどれくらいいるかというのはわかってるんです。だから、事実としては数分間の発言のためにわざわざ来るってことなんです。これは不思議ですよね。数分間の発言のために来るのであれば、あまり重要なことではないのかなと思えるじゃないですか。平井知事は終わったあと記者に対してブリーフィングをするから重要だけど、小池さんには重要ではないんですよ。ということは別に来なくともいい。副知事にその役をやってもらってもいいんです。そこがまず不思議なところ。

 FNNが公務復帰を伝えてから大手メディアが一斉にそれに追随する様を見ていると、スポニチの朝の記事を相当打ち消ししたいんだなという思いが透けてくる。スポニチの記事が鋭いのは、30日の本会議で小池都知事が自身の体調と進退について説明と発言があるのではないかと書いているところで、都議会に出席できないと、知事は議会で都の行政についての説明をしなければならないけれども、それができないのであれば、これはもう辞任しかないわけです。となると、30日がポイントになる。それまでまだ間があるけど、相当切迫感があるのだろう。21日は日曜日、翌22日に有休をとれば、23日まで3連休になると先ほど言いましたが、これ何を意味するかというと、小池知事が30日を待たずに21日に都庁に行くとなると記者が集まりますよね。でも、この記者たちはたぶん小池さん専門の記者たちじゃない。そこで21日小池さんが緊急会見を開いて「辞任発表」というシナリオも考えられなくはない(エーッ!)。つまり、なぜ21日日曜にやるかというと、政治部記者とか都庁担当の社会部記者たちは、ずーっと「政治の季節」が続いてきたから、この3連休の初日に休みをとってどこかに行っている可能性もありますよね。そのタイミングで記者会見を開けば、小池さんのことをいろいろと追求する記者は少ない。そうすると、追求なしに会見は乗り切れる、ということは考えられる。でも、記者の追求をいかにして避けるかというのはみんな考えていることで、特に珍しくも何ともないんですよ。

 でも、小池さんと言えば、説明責任が生じるものが幾つかあるんですよ(いっぱいあるしー)。特に直近ではテクノシステムという会社の生田尚之さんという社長が一人バブルを体現していて、金遣いがものすごく荒い。あちこちから融資を引っ張って来ているけど、実業にはほとんどつかわずに浪費しまくっていた。なぜそこに金が注ぎこまれたかというと、政界における広告塔になる人がいたからで、それが小泉純一郎さんであり、麻生太郎さんであり、小池百合子さんも噛んでいる。さらに言えば、小池さんはこのテクノシステムから献金を受けている。この説明をまずしなければいけないんですね。こういうのを追求してきた記者さんはいるので、普通に会見を開けば、まずこれは絶対に訊かれる。ネタももっているはずだから。でも、これは小池さん側からすれば、追求を受けたくはない。21日日曜日、しかも連休の頭にすれば、そういう記者たちもどこかに行っていて来られないにちがいない、あるいは、その蓋然性が高いと判断した。そういう可能性はあると思いますね。

 そして、もひとつは木下都議の件です。無免許運転で在宅起訴されましたけど、この人、今は離れてますけど、都民ファーストの会にいたんですよね。記事によると、小池さんが環境大臣だったとき(2003年から2006年 小泉政権時)の肝いり政策である「クールビズ」のキャンペーンを手がけたのは、当時広告代理店に勤めていた木下さんでした、と。で、東京都議になれたのも、小池さんの政治力があってのことだと、東スポにあるんですけど、こういうのはみんなわかるわけですよ。木下さんは、みんな驚くと思うんですけど、今年の5月から7月にかけて、免停中に7回も無免許運転をやってるんですね。きっかけになったのは、都議選中の7月に人身事故を起こして逃走してしまったことで、何で不起訴になったのかまったく分からないんですけど、これ(当て逃げじゃなくて)ひき逃げになりますよね。で、木下さんが議員を辞めないでしょう、「まだ私を支持してくれる人がいるんで」とか言って。これ通用しないですよね。「木下、辞めなさい」と言うのは、小池さんに課せられた仕事だと思いますよ。都民ファーストの会の荒木代表もそうだったけど、これは小池さんもピシッと言わなければいけないと思いますよ。
<以下略>

 小池都知事はオリンピックの赤字や補填規模などについても説明しなければならない。今日小池知事が辞任発表するとは思えないが、ぶら下がりでも何でも応じないで逃げたら怪しいということになるから、いくら短くとも会見くらいはするだろう。――何を言うのか。何を考えているのか…。


 
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