ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

山中・横浜市政の多難なる船出

 新しい横浜市長山中竹春氏が昨日(8月30日)初登庁し、記者会見に臨んだという。話題にはなったが、よそ様の首長のこと。それでも、何を語るのかに関心はあるという程度だが、ありがたくも会見内容を文字に起こしてくれている人が複数いる。全36分の文字起こしには、それ相応の時間と労力が必要で、これをその日のうちにWebに上げていることに敬意をもって読ませていただいた。だが、その内容はというと、IRの問題やコロナ対策など、「まだ初日ですから」を言い訳にすることが多く、「守り」の姿勢ばかりが目についた。8月24日には「強要未遂」や「経歴詐称」などの疑いで市民から告発もされている。横浜市の人たちはこれから山中市長とどう向き合っていくのか、多難なる船出と言わざるをえない。

 選挙ジャーナリスト畠山理仁さんの8月30日付Noteから、IR撤回関連の部分だけを拾って引用してみる。

山中竹春 横浜市長就任記者会見・全文文字起こし|畠山理仁|note

 毎日新聞毎日新聞の樋口と申します。どうぞよろしくお願いいたします。今、冒頭のご発言であったIRの誘致撤回なんですけれども、これ具体的にどのような手続きがあって、いつまでにそういった手続きを始めるのか。この点をまず一点うかがわせてください。
 山中市長はい。ありがとうございます。スケジュールに関しましては、当局と十分に検討した上で、速やかにスケジュール感をお出ししたいと思います。
 毎日新聞:重ねて恐縮ですが、このスケジュール感を出すのはいつ頃までにという目標はあるんでしょうか。
 山中市長はい。可及的速やかにと考えております。なにぶんにも、まだ初日でございますので、当局と議論をいたします。

 NHK:NHKのアリヨシと申します。よろしくお願い申し上げます。すいません、毎日新聞さんの質問に重ねてで恐縮なんですけれども、まずIRに関してなんですが、宣言を出されるとおっしゃってたんですけれども、宣言というのは、この記者会見のことではなく、また別途されるということなのかを一点おうかがいしたいのと、あと今、カジノに関して取り組むとおっしゃいました。また先日もワクチンの関係と、あと医療提供体制について、取り組んでいきたいとおっしゃいましたが、何か病床の確保などで具体策がありましたらお教えください。お願いします。
 山中市長はい。ありがとうございます。カジノIRを止めるという宣言を出すと、先週申し上げたんですが、私自身の口から、市の公式的なスタンスとして、そのような意見を発する。この機会は必要ではないかと考えております。なので、そういった宣言を行いまして、あわせてどういったスケジュール感で、手続きの方を、残った手続きの方を進めていくか。こういったことを当局とですね、連携をしながら、詰めていきまして、お示しをしたいと考えております。

 読売新聞:読売新聞の◎◎と申します。何点かご質問させてください。まずはIRに関してなんですけれども、もともと、将来の財源不足のために誘致が決められた経緯があったかと思います。その撤回後の、代替案、経済活性化のために何をするのか、お考えがありましたら教えてください。
 山中市長はい、ありがとうございます。今後ですね、ご指摘の通り、厳しい財政運営が予想されるかと思いますので、当局を中心に、財政運営については、対策を十分検討していく必要があるかと思います。まあ、3千ある事業、3千以上ある事業のうち、事業の見直し等も必要かもしれませんし、また一方で税収を増加させていくことが必要ですので、そういった対策に関しても、検討してまいりたいと思います。はい。
 読売新聞:選挙期間中には、IR撤回後の代替案としてハーバーリゾート構想を掲げている案をベースに考えるようなお話があったかと思いますけれども、そのあたり改めていかがでしょうか。
 山中市長はい。山下埠頭の整備については、代替案を策定してまいる予定です。その際にはですね、山下埠頭という場所の歴史、あるいは特性を生かした整備案。ここは必要なのではとないかと思います。山下埠頭というのは、横浜の中でも象徴的な場所と申しますか、そういったシンボル的な場所でございますので、やはり、歴史とか、特性等を踏まえた上での整備案。さらに、市民の皆様からですね、理解を得られる整備案、これを策定していくことが重要ではないかと考えてます。そのためには、きちんとですね。市民の皆様からもご意見をうかがう機会を作って参ります。はい。

 時事通信時事通信◎◎と申します。よろしくお願いいたします。IRについてなんですけれども、9月の最初にもう既に事業者選定委員会というのが開かれる予定になっています。これについてどのように対応されるおつもりでしょうか。
 山中市長はい。あのー、その事業者選定、開催予定の事業者選定委員会については、中止というふうに考えております。

 共同通信共同通信です。先程の質問にあった選定委員会なんですけれども、中止と考えているというのがご回答だったと思うんですけれども。えーと、今後の、先程のスケジュールになってしまうんですけれども。宣言ですとか、選定委員会の中止というのはどういう順番でやられていくと考えられますか。
 山中市長その点に関しても、関係部署と検討して早期にですね、中止に向けたスケジュールを作ってまいりたいと考えます。はい。
 共同通信:少なくとも選定委員会に関しては今後、開かないという?
 山中市長はい。
 共同通信:わかりました。

 山中市長の経歴詐称疑惑については、ライターの西谷格さんの8月26日付SAKISIRUの記事がある。

横浜市長選で初当選の山中竹春氏に「疑惑」横浜地検に刑事告発状提出 – SAKISIRU(サキシル)

山中氏には、経歴詐称疑惑もある。公式HPには

 早稲田大学政治経済学部 卒業
 ・早稲田大学大学院理工学研究科 修了
 ・九州大学医学部附属病院 文部教官助手
 ・アメリ国立衛生研究所(NIH)研究員

と書いてあるが、年代までは記載されていない。
自著などに書かれた情報を総合すると、95年に政治経済学部を卒業したあと、98年に理工学部を卒業し、00年に大学院修了となっている。大学教授の経験があるので博士課程まで終えているのかと思いきや、大学院に在籍していたのは修士課程の2年間だけだったようだ。だが、ここまでは詐称というほどのものではないだろう。
郷原(信郎 弁護士。横浜市長選で山中氏の「落選運動」をしていた)氏が問題視するのは、選挙期間直前まで山中市長がさまざまな媒体でアメリ国立衛生研究所(NIH)の「リサーチフェロー」の経歴を名乗っていた点だ。科学技術振興機構が運営する研究者データベース「リサーチマップ」でも、記載されている時期があった。

「リサーチフェローという職位は、博士課程終了後に3年以上の経験を積むなどの必要があり、簡単になれるものではありません。山中氏が過去に経歴詐称を行なっていたのは、明らかです。横浜市立大学に採用された際も、詐称していた疑いがある」
山中氏は自身は「コロナの専門家」であると大々的にアピールしており、朝日新聞デジタルも<感染爆発下の横浜市長選、「コロナ専門家」が制す>との見出しで、“お墨付き”を与えた。

 この学歴詐称の件を、西谷さんは記者会見で直接山中市長に問いただしている。以下、再び畠山さんのNoteより引用。

 サキシル:あ、私? サキシルというウェブニュースの西谷と申します。山中さんの経歴についてまたうかがいたいんですけれども。山中さん、2002年から2004年まで、アメリカの国立衛生研究所というところでリサーチフェローをされていたということなんですが、これは事実なのかどうか。ということと、あと、これまでの、95年に早稲田大学を卒業してからのご経歴について簡単にホームページに出てるんですけど、何年何月ってところまで書いてなかったので。これまでのご経歴を簡単に教えていただけますでしょうか。
 山中市長はい。ありがとうございます。まず、ナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルス、NIHで研究員をやっていたことに関して、詐称はございません。
 サキシル:リサーチフェローという肩書きでよろしいですか。
 山中市長研究員を表す一般的な用語として、リサーチフェローという言葉を使ったことはございます。ただ、リサーチフェローに関しても、様々ですね、定義がございます。さまざまというか、あの、機関ごとに、定義が違う場合もあるんですが、研究員を表す用語として、リサーチフェローと使っております。はい。
 サキシル:じゃあ、リサーチフェローであったということは事実だってことで?
 山中市長研究員であったことに関しては詐称はございません。
 サキシル:リサーチフェローだったんですか。
 山中市長研究員を表す一般的な用語としてリサーチフェローという言葉を使ったことはございます。はい。
 サキシル:なるほど。
 山中市長フェロー、まあ、あるいフェローという言葉を使ったこともございます。
 サキシル:この研究所のホームページを見ると、博士課程の学位を持っている者にリサーチフェローという肩書きが与えられるということなんですが。では山中さんはこの2002年の段階で博士課程の学位を持っていた、ということになりますか。
 山中市長博士号を取得したのは2003年です。
 サキシル:そうなると、2002年に「リサーチフェロー」の肩書きを持っていたということと矛盾が生じて……。
 山中市長研究員を示す用語として、広くリサーチフェローを、研究員と訳すること、あ、研究員とリサーチフェローを同義に使うこともございますし、あるいは研究員とフェローっていうのを同義に使うこともありますし。そこは言葉の問題なのではないかと。使い方なのではないかと思いますし。繰り返しになって申し訳ありませんが、NIHで研究員として、きちんと研究活動をしていたということに関して、詐称はございません。
 サキシル:わかりました。

 どこどこ所属の研究員なら「研究員」と書けばよい。外国、特に欧米の研究機関の「リサーチフェロー」などと横文字(カタカナ語)にすると、この国では裏付けのない「箔」や「権威」になる。それがわかっていて、わざわざそうしているとしたら、詐称でなくともいかがわしいというものだ。




↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村