ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

これで開催するのか、東京五輪

 五輪開会式の音楽担当を務める小山田圭吾が過去に障碍者に対し悪質な「いじめ」をしていた件。どうしてこんなタイミングでとも思うが、いくら大昔の失態・悪行とはいえ、のちにそれを自ら堂々と笑い話として話すこと自体、後悔や反省の気持ちがあるとは思えない。やはり五輪の仕事にかかわるのはふさわしくないと思う。

小山田圭吾氏辞職せず「本来なら辞退すべきだったかも」謝罪し職全う意向(日刊スポーツ) - Yahoo!ニュース
【東京五輪】世界に広がる3度目の恥…悪質いじめ小山田圭吾 世界各地で報道(東スポWeb) - Yahoo!ニュース

※追記)「全国手をつなぐ育成会連合会」の声明。
http://zen-iku.jp/wp-content/uploads/2021/07/210718s.pdf


 開会式を直前に控えた組織委員会としては、この期に及んで辞任されたらたまらないということなのだろうが、そもそも人選の段階での情報収集や「身体検査」が甘かったわけで、辞任した森・前会長や、開会式の演出統括役のディレクターも含めて、こうした人物を選任する組織委員会の体質自体が改めて問われなければならない。

 さらに、組織委員会のこの体質と関係しているかどうかわからないが、来日している海外メディア記者たちから組織委の仕事ぶりに対する不満が噴出しているようだ。7月17日付文春オンラインの及川彩子氏の記事より部分引用する。

「ちゃんと開催しようという努力が感じられない」海外メディアが東京五輪に“大憤慨”ワクチンは自己申告、書類は不備ばかり、取材体制は大学以下… | 文春オンライン

オリンピック組織委員会の混乱は、大会運営だけでなくメディア対応にも表れている。メディアにとって今頃は本来ならば精力的な直前取材を行っていたはずの時期だが「組織委員会の対応が不透明で、不安とストレスでいっぱい」という声が各地から聞こえてくる。
……
問い合わせをしてもまともな応答はない
 入国前には、入国後2週間の取材予定表や出国予定の提出が義務づけられている。しかし、その提出方法がなんとwebフォームではなくExcel入力。加えて組織委員会から届いたファイルが読み取り専用だったり、PDFファイルが開けないなど不備も多く、締め切りまでの日数も極端に短く間に合わない人が続出した。
 問い合わせをしても「期日までに送ってください。締め切りに間に合わない場合は、記者証を無効にします」という返信だけが返って来る状態では、各メディアのコロナ対策責任者もお手上げである。
 無事書類を提出しても、油断はできない。活動予定表を送っても組織委員会からは「受理された」とも「拒否された」とも連絡はない。問い合わせへの返信も当然なく、受理されたと信じてスタッフを日本に送り出したら、入国時に「予定表の許可が下りていない」と言われたメディアさえある。実際、書類に不備があり、空港から強制送還になったケースもあるという。

ワクチン接種確認は自己申告だけ
 組織委員会が提示する基準が曖昧なのは、最大の関心事であるワクチンについても同様だ。
 IOCは、大会開催までに関係者の7~8割がワクチン接種済みと発表している。しかし、その根拠はあまりにも危ういと感じられる。
 6月上旬にIOCからワクチン接種に関するアンケートが筆者にも届いたが、「ワクチンを接種しましたか」という質問にイエスかノーで答える簡単なもので、接種証明書などを添付する必要はなかった。つまり完全なる自己申告制で、虚偽の答えをしてもIOC組織委員会には分からないのだ。
……
 オリンピックのアメリカ代表を決める陸上競技の選考会では、記者証を申請する時にワクチン証明書を要請された。もちろんワクチン未接種者や、2回目の接種から2週間が経過していないメディアは記者証は与えられなかった。
 観客も入場の際にワクチンパスポートの提示が必要なほか、ワクチン接種済みの人と未接種者の席を分ける徹底ぶりだった。

海外メディア=ダーティ?
 余談になるが、組織委員会から送付されたメディア向けのプレイブックQ&Aの中に、日本のメディアから出たと思われるこんな質問があった。
「国内メディアと海外メディアは、入り口、セキュリティ、トイレなどは別々にしてもらえるのでしょうか。取材現場でも仕切りはされますか。ミックスゾーンでは『クリーン(清潔)』、『ダーティ(不潔)』セクションに分けられますか」
 この表現に海外メディアは少なからずショックを受けたようだ。
 公式な文書で「海外メディア=ダーティ(不潔)」と捉えられる表現が使用されていること、また海外からの渡航者だけがウィルスを撒き散らしていると考えている国内メディアの他人事感にも危うさを感じてしまう。
 6月下旬に静岡放送のスタッフ2名が、静岡県島田市で行われていたシンガポールの卓球代表の事前合宿を取材し、後に2名ともPCR検査で陽性反応が出たことも話題になった。静岡放送によればスタッフはワクチンも未接種だったといい、シンガポール側が激怒したという報道も頷ける。

 入国後の行動ガイドラインも曖昧で、とりわけホテルの問題は深刻だ。
 組織委員会が当初指定していたメディアホテルの部屋はまったく足りておらず、記者たちは各自でホテルを予約していた。組織委員会からは3月下旬に宿泊先を問い合わせる連絡が来たので回答したが、そのホテルで大丈夫なのか、それとも変更が必要なのかについては一切連絡がなかった。
 そして2カ月ほどが経った5月末、次のような連絡が一方的に届いた。
「新しいメディアホテルのリストを送るので、予約済みのホテルをキャンセルしてメディアホテルに宿泊するように」
 その時点で開会式まで2カ月を切っており、支払い済みの人もいたためメディア側の反発は大きく、後に組織委員会から「キャンセル料がかかる場合は組織委員会が負担します」という条件とともに、リーズナブルな金額の部屋を紹介するという連絡が届いた。
 しかし実際にホテルのリストが届いたのは、変更の指示からさらに2週間が経った6月半ばで、しかもごく普通のビジネスホテルが1万6000円~というかなりの割高設定だった。
 コロナ前に指定されていたメディアホテルを予約サイトでみると、オリンピック期間中でも6000円くらいで予約可能だ。インバウンドの観光客が減少しており、ホテルの料金は軒並み低くなっている状況で、なぜ1万6000円という値段設定になったのだろうか。
 食事場所の指示も厳しい。メディアはホテル・メディアセンター、競技会場のどこかで食事を取ることを推奨されているが、肝心の「どこで何が食べられるのか」という情報がまったくない。デリバリーも認められているが、英語に対応しているサイトの紹介もなく、ルールは作ったものの運用が詰められていない場面が多い。
……

「ちゃんと開催しようという努力が一向に感じられない」
 日本に入国した海外メディアは、スマートフォンGPS組織委員会に常に居場所を監視されることになる。しかしその情報がどのように使われるのか、管理されるのかメディア側には明確にされていないことへの不安もある。
 イギリス紙「ガーディアン」の記者は「組織委員会からの連絡はすべてが後手後手。イギリス代表の事前合宿取材をする予定だったのに、タクシーが使えないどころか代替方法の提案もなくて困っている」とこぼしていた。
 米国の通信社の記者は組織委員会への不満をこう語る。
「記者は競技だけではなく、IOC組織委員会、スポンサー、ドーピング問題、開催都市の状況など五輪にまつわる様々なことを取材するのが仕事だが、今回は競技以外の取材はほとんど不可能だ。そもそも五輪中止を決断すべきタイミングは何度もあった。それを無視して開催を決断したはずなのに、組織委員会からはちゃんと開催しようという努力が一向に感じられない。いまだに開催可否についての話題が出ている状態で、東京の意図が理解できない」
 とはいえ、コロナ対策や報道陣の監視体制など、表面的には組織委員会の管轄になっているが、実質は国が指揮をとっており、組織委員会も振り回されていることは容易に判断できる。彼らも上からの指示を受け、日々混乱の状態にありながら、なんとか対策を講じ、解決策を見出しながら進んでいる。
 組織委員会から届くメールにも内部の混乱がありありと浮かんでいる。休日や深夜にメールが届くことも多く、現場スタッフの労働環境も心配だ。
 オリンピックそのものに反対する意見は日増しに大きくなっており、海外メディアへの視線が厳しいことも理解している。だが取材したメディアのほとんどは東京の状況を把握し、このような状況下での開催へ同情の気持ちを寄せている。だがオリンピックを開催すると決めたのならば、組織委員会、そして国がもう少しきちんと対応してくれれば、というのが報道陣の共通した願いである。

 ワクチン接種が自己申告制というのには驚かされる。これは本当に「先進国」を自負自認する国の姿なのだろうか。観客を入れてやるかやらないかを決めたのも7月8日、開会式の2週間前である。現場を預かる人びとでなくとも無茶苦茶な話だろう。これにコロナ対策まで付いてくるのだ。これで「安心安全だ」と繰り返されて、不安に思わない人はどうかしている。

 「組織委員会から届くメールにも内部の混乱がありありと浮かんでいる。休日や深夜にメールが届くことも多く、現場スタッフの労働環境も心配だ。」という及川氏の言葉に目が留まる。いつもしわ寄せは現場に来る。最前線で懸命に流れをつないでいる人たちが本当に心配になる。



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