ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

スポンサーとCMイメージ

 むかし心理学の授業か何かで「サブリミナル効果」の話を聞いたのはちょっとした驚きだった。映画のコマ数は1秒間に24個くらいあるらしいが、実験的にその中に一コマだけコーラの絵を挿入して上映すると、見ている側には特に違和感はないらしい。ところが、映画を見終えると、コーラを買いに行く人が続出するのだという。人間の潜在意識に働きかけるこのような手法は、「危ない」ので以後禁止された…という話だったと記憶している。改めて調べてみると、この話は「実験」自体が虚構だったという解説(金谷俊秀氏による)があり、またも驚かされる。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%B5%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%AB%E5%8A%B9%E6%9E%9C-188547

 「サブリミナル効果」の実験は虚構かもしれないが、毎日TVで15秒のスポットCMを見続けていると、ある商品のあるフレーズが頭に刻みつけられることは確かにあるし、CMに出演している人や光景に好感があると、お店で商品を選択する際、何となく「そちらに」手が伸びるということもある。他方、CM出演者に何か「不祥事」が起こると、イメージ悪化が避けられないからだろう、そのCMはすぐにボツにされ、別の出演者による新たなCMが何事もなかったかのように流される。
 企業にとっては自社や商品のイメージが良いにこしたことはないが、むしろイメージをイメージとして意識されるよりも、サブリミナルなかたちで進んだ方がよいのかも知れない。「何となく」が大事で、それが〝それ〟というかたちで意識されると、かえって些細なことで傷がついたりする。

 サッカーの欧州選手権ポルトガルの代表クリスティアーノ・ロナウド選手が、記者会見の席上にあったコカ・コーラのボトルをどけて、代わりに水を飲むように呼びかけた。日頃からアルコールを口にしないなど飲食と健康管理に気を遣うロナウド選手にとっては、目の前にコーラが置かれているのは不快だったと想像されるが、この結果(?)同社の株価は1.6%(時価総額4,410億円分)も下落したという。
 選手の記者会見の席上にわざわざコーラやビールを置く必要性はない。このコーラとビールは欧州選手権に資金を提供しているスポンサーのものだろう。記者会見に応じるスター選手の絵の中にCMとして「さりげなく」挿入するつもりだったものが、選手の行動によって「視覚化」「意識化」され、負のイメージが付加されたかたちだ。
 
ロイター on Twitter: "ロナルド、コーラより「水飲め」 スポンサーに否定的反応で株価下落… "

 東京五輪について言えば、組織委員会は競技会場での観客への酒類の販売を条件付きで認める方向だったが、反対の声のあまりの多さに、一転して販売を見送ることにしたという。このコロナ禍に、飲食店には客に酒を出すな、人々には集まって酒を飲むなと言っておきながら、オリンピックなら特別にOKにするという姿勢が許容されるはずもない。もし、これが認められれば、スポンサー(「ゴールド・パートナー」)であるアサヒビールは「独占的」に五輪会場で酒類を提供できたかも知れない。しかし、そんな展開になれば、やっぱりアサヒは組織委員会と裏でつるんでいたんだと糾弾されることになり、企業が負うイメージの傷口は大きくなる。そう考えると、これはむしろアサヒの側から組織委員会へ見送りでかまわないと頼んだように思えてくる。

 企業としては品良く、さりげなく自社のCMを流したいところだ。コロナでお祭り気分が盛り上がらない中、あまり宣伝を露骨にやると「反発」を受ける。今日から静岡を回ることになっている聖火リレーのことは、最初の3月下旬の頃はともかく、今はあまり話題にも上らない(上らせない)のは、聖火リレーに便乗して、必要も意味もない宣伝行列を続けていることを国民に知られると、マイナスになることを恐れているからではないか。以下のTweetルポライターの三浦英之氏が撮影したと思われるが、ディズニーランドの何とかパレードのような車列は、不謹慎とのそしりを免れないと思う。

https://twitter.com/miura_hideyuki/status/1405706708886851586

備忘的メモ。昨日は「赤木ファイル」が開示された。今日、76年前に沖縄戦の組織的な戦闘が終わったとされる「慰霊の日」。そして、今朝、4月30日にジャーナリストで作家の立花隆さんが亡くなっていたことがわかったとの速報あり。合掌。



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