ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

LGBT法案とIOCのこと

 昨日(5月30日)、東京・永田町の自民党本部前で抗議デモがあった。自民党が(政府方針や世論に反して?)「LGBT理解増進法案」の今国会提出を断念する意向を示したことを受けてのもの。

LGBT「差別なくすための法律を」 自民本部前でデモ:朝日新聞デジタル
自民のLGBT差別発言「怒っています」 党本部前で抗議デモ | 毎日新聞
 
 この法案、オリンピック開催にあたり「五輪憲章」に掲げられた原則を「御旗」にしているところもある。2014年12月8日より有効とされる「五輪憲章」の「オリンピズムの根本原則」にはこう書いてある。

.....
 2. オリンピズムの目的は、 人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会を奨励することを目指し、スポーツを人類の調和の取れた発展に役立てることにある。.....
 4. スポーツをすることは人権の 1 つである。 すべての個人はいかなる種類の差別も受けることなく、オリンピック精神に基づき、スポーツをする機会を与えられなければならない。 オリンピック精神においては友情、 連帯、 フェアプレーの精神とともに相互理解が求められる。.....
 6. このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向 sexual orientation 、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会のルーツ、 財産、 出自やその他の身分などの理由による、 いかなる種類の差別も受けることなく、 確実に享受されなければならない。
 7. オリンピック ・ ムーブメントの一員となるには、 オリンピック憲章の遵守および IOC による承認が必要である。

(※太字は当方が施した)
(出所:https://www.joc.or.jp/olympism/charter/pdf/olympiccharter2014.pdf)

 オリンピックを開催する国が、世界の潮流に乗れず、これ以上「人権後進国」のレッテルを貼られるのはまずい。政府の意図はそんなところだと思うが、法案成立を期す側にとっては「ガイアツ」のアシストが見込める絶好の環境ではある。与野党による修正協議で野党側が「差別禁止」を盛りこむように執拗に迫れたのも、内外の世論の後押しがあったからだろう。ところが、一旦は「差別禁止」を受けいれたはずの自民党が、党内の異論を封じ込めずに漂流し始め、ついに法案の今国会提出を断念する顛末となった。
 野党が提出した「禁止法案」に対し、自民党の「理解増進法案」は、及び腰でいろいろと問題はあるが、それでもひとつのメッセージ性は有している。立憲幹部はそれでもいいから国会に提出してほしいと譲歩した。それでも自民党はつぶした。

 「こういう国ではオリンピックは開催できない、なぜなら「五輪憲章」の原則に反しているからだ」と、IOCはそれくらいのコメントをしてもいいくらいだ。もっとも、この組織の要人たちに、「五輪精神」は無縁なものらしく、日本に非常事態宣言が出ていようが、首相から五輪中止の申し出があろうが、問題なくオリンピックはできると言っている。日本政府と結んで日本と世界の人を足蹴にして恥じない「凶暴」なこの組織は、実態に合わせて、以下のように「五輪憲章」を早々に改訂してはどうか。

 2. オリンピズムの目的は、 人間の尊厳を軽んずる殺伐とした社会を奨励することを目指し、スポーツを利権の増進に役立てることにある。.....
 4. スポーツをすることは利権の 1 つである。 すべての個人はいかなる種類の差別をも容認・忍従し、オリンピック精神に基づき、戦争、パンデミック、その他いかなる場合であっても、スポーツをする機会を強要されなければならない。 オリンピック精神においては敵意、 孤立、 姑息の精神とともに相互不信が求められる。.....
 6. このオリンピック憲章は人間の権利と自由について次のように定める。人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、 国あるいは社会のルーツ、 財産、 出自やその他の身分などの理由による、すべての種類の差別は是認されなければならない。


 <追記>松本健太郎氏(JX通信社)の2020年11月26日付記事を参考に付す。
欧米よりLGBT比率が高いかもしれない日本 一方で法的整備に遅れ:日経ビジネス電子版




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