ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「 #教師のバトン」を見て

 「#教師のバトン」というTweetを眺めている。文科大臣が「願わくば学校の先生ですから、もう少し品の良い書き方をしてほしい」などとコメントしていたので、文科省のHP上の本来の「#教師のバトン」も併せ読みし、先生方がどんなに下品な書き方をしているかと思えば、さにあらず、みなさん学校と自身がおかれている現実を “肉声” で伝えているだけのことだった。文科省の「#教師のバトン」に寄せられたものに比べればTwitterの方が辛辣な感じはするが、下品で無作法なことはない。それにこちらの方がより「真実」に近いと思う。

News about #教師のバトン on Twitter

 4月4日朝の時点で、ここにTweetされていた3月末から4月初めまでのほぼ1週間の計150件を分類してみた(ヒマ人!)。相応のやりがいを(淡々と)述べているポジティヴ?なものもないではなかったが、95%以上はネガティヴな内容をともなうものだった(もちろん、ポジティヴ=前向きであるが故の批判というのも相当数含まれる)。重複はあるが、その内訳は、

長時間労働、超過勤務、残業などに関するもの 57件(38%)
〇仕事量の多さや多忙に関するもの       35件(23%)
〇部活動に関するもの             34件(23%)
〇教育行政や学校のしくみ・制度に関するもの  27件(18%)
〇健康や病気に関するもの           17件(11%)

 その他、手当(特に土日の部活)、家庭生活、職場に関することなどが書かれていた。

 上の個々の内容は相互に関連していて、この国の学校で働く先生方の様子をよく示しているように思う。朝早くから夜遅くまで働きづくめで、家に帰ってもまだ仕事は終わらず、子どもが病気になってもおいそれと休みも取れず、土日は部活動に駆り出され、さして手当* がつくわけでもなく、……あげくに自らの健康を損ねてしまう。小生もかつて学校で働いていたので、こうした先生方をたくさん見て来たし、自分も部分的にはこんな毎日を送ってきた。
* 特殊業務手当。千葉県だと2018年から一日4時間以上部活指導をして3,600円とのこと。小生の記憶では、30年ほど前は500円が750円だか800円だかに上がって喜んでいた気がするが、それからしたらずいぶん増額された。といっても、時給にしたら900円以下である。

 特に土日の部活による休日労働と日当(手当)については、知り合いの弁護士から、違法だから裁判をすれば絶対に勝てるとまで言われたことがあった。部活に精勤な職員ならまだしも、小生のような「不真面目」な顧問にはふさわしくないと言い訳して、訴訟の話は断ったが、そもそも学校の教育課程の外にあり、生徒の自主的活動とされる部活動に土日も駆り出され、「生徒指導」をしろというのである。手当よりも、まず休みがほしいと思っている職員は数多い。

 あるとき部活顧問の委嘱の話をしていて、校長に「自分のような素人ではなく、専門的な顧問から技術指導をしてもらいたいと生徒は思っていると思いますよ。」と言ったら、何と、「そういうことを部活の顧問を引き受けない理由にしてはいけない」と返されたことがある。いや、顧問をやらないと言ってるんじゃないんですよ、校長先生。やりますけど、それは生徒のためにはならないと言ってるんです!
 あるいは、別の校長は「専門外のことでも、先生が一生懸命に取り組めば、その姿を子どもたちはよく見ているものですよ。」と言い放った。「反面教師」という言葉があるくらいだから、教育の効果や意味は一義的に単純化できるものではない。そうだとしても、一生懸命やれば許されるという唖然とするような精神論が跋扈する世界は、おそらく学校くらいのものだろう。そうやって学校の先生の多くは何でもかんでも被らされてきたのである。

 多くの先生方にとって、自分に不向きな部活顧問を引きうけたり、あるいは、家にまで持ち帰ってサービス残業をするのは、そうすることで明日以降も学校が支障なく円滑に動いていくことを願ってのことだ。しかし、これはいわば潤滑油=サービスなのであって、ガソリン(燃料)=本務ではない。本来ガソリンで動かすべき機関を潤滑油だけで動かせというのはそもそも無理なのである。世間の人々には是非そのことを理解していただきたいと願う。

イイ話のつもりが…文科省「#教師のバトン」に悲痛続々:朝日新聞デジタル
 



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