ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

近江アナの転職

 3月までNHKのアナウンサーだった近江友里恵さんがこの4月から不動産会社に入社したという。4月1日付毎日新聞デジタルにインタヴュー記事がある。人気アナウンサーだったこともあり、何かと世間の詮索の対象にされてきたが、本人にとってはきちんと説明する機会がなかったことがもどかしかったようだ。
(聞き手:佐々本浩材・記者)

NHKを辞めたワケ 近江友里恵さん、心に刻まれた隈研吾さんの言葉/上 | 毎日新聞

 印象に残った箇所を3つほど。

 「自分の言葉でしゃべって、それをきちんと伝えていただけるのであれば、取材をお願いしたいと思っていました。番組内では、今後の詳しい進路を伝えられなかったため、辞めるということだけが独り歩きして、その結果『辞めて専業主婦になるんでしょ』とか、そういうことを言われることが多くて。多分、男性が会社を辞めるって言っても『専業主夫になるんでしょ』というふうには言われないと思うんです。専業主婦になることはもちろん悪いわけでは全くないですけども、何をするかは私の自由なのに、何かいろんな人に詮索されるのって本当に嫌だなって痛感しました。本当だったらひっそり暮らしたいというのもあるんですけども、ここできちんと私の気持ちをお話しして、『これで全てです』『これでおしまいです』っていうふうにしたかったので、お話をさせていただきました」

 「多分、男性が会社を辞めるって言っても『専業主夫になるんでしょ』というふうには言われないと思うんです」と。本当、その通り。こんなだから、ジェンダー・ギャップ指数が156カ国中120位なのだ。

「全く誰にも相談しませんでした。相談すると、恐らく絶対もったいないっていうふうに誰からも言われると思ったので。そうするとやっぱり自分の中でも考えが揺らいでしまったり、ブレてしまったりするかと。他の人に言われたからこういう決断をしたとか、そういうふうに思いたくなかったので、全て自分で決めました。家族にも、友人にも、職場の先輩にも、誰にも相談していません」

 この気持ちはよくわかる。「どう思う」と、かりに誰かに相談したとしても、もうその時点で自分の中では結論が出ていることの方が多い。

あさイチ」のプレミアムトークで、多くのゲストの話を聞いたことも転職の決断を後押ししてくれたと語る。……
 俳優の中井貴一さんの一言も心に残る。当時57歳になる直前だった中井さんは、初めてミュージカルにチャレンジしていた。
 「『なぜミュージカルを今、やろうと思われたのですか?』と伺ったら、『恥をかきたかった』とおっしゃって。一つのことを突き詰めていって、50代になるともう誰も怒らないし、失敗したりすることも少なくなってくる。あえて初めてのことに挑戦して恥をかきたかったっていうことをおっしゃっているのが、すごくかっこいい生き方だなと思いました。私も新しいことに挑戦して、多分新入社員と同じレベルからきっとやり直すことになって、たくさん恥もかくだろうけど、そういう恥をかく人生も悪くないなっていうふうに思わせてくれた一言です」

 周りから何かを言ってもらえるうちが花で、年を重ねていくと、だんだん何も言ってもらえなくなる――などと大昔えらそうに生徒に話したような気もするが、中井さんの場合は、周囲がどんどん自分を「大御所」みたいに祭り上げていくから、そういうのに胡坐をかくのが嫌なのだろうと思う。それにしても、実際に人前で恥をかくのは辛いものがあるはずで、中井さんも近江さんもえらいなと思う……。あっ、「かっこいい」のまちがい!

 近江さんのご活躍を祈って止まない。


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