ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「他山の石」

 〇他山の石
  よその山から出た、つまらない石。転じて、自分の修養の助けとなる他人の誤っ
  た言行
。「他社の不祥事を他山の石として会計の透明化をはかる」
   ⇒他山の石以て玉を攻むべし(「詩経」小雅・鶴鳴から)
  ◆質の悪い石でも玉を磨くのに役立つということから、良い言行を手本にする意
   味で使うのは誤り。

 (デジタル大辞泉より)※太字は当方が施した。

 昨日3月23日の東京地裁河井克行・元法務大臣がこれまでの供述を一転させ、ほぼ全面的に容疑を認め、議員辞職を表明した。今まで頑なに容疑を認めず、無罪を主張してきたのに、この突然の変貌には何があるのか。
 政治アナリストの大濱崎卓真氏によれば、公職選挙法の規定により、3月15日までに辞職すると4月に補選をやらなければならないが、それ以降であれば、10月まで補選をしなくてよいので、 河井個人がではなく、自民党が春の補選・再選挙の焦点となることを避けるために、辞職時期をずらしたと考えられるとのこと。

河井克行元法相は、なぜ突然買収容疑を全面的に認めたのか、選挙日程を逆算した裏事情とは(大濱崎卓真) - 個人 - Yahoo!ニュース
自民「辞職のタイミング評価」 4月の同日選回避に安堵 [河井夫妻の公選法違反事件]:朝日新聞デジタル


 河井被告の議員辞職表明に先立ち、自民党の2F幹事長は同日午前、河井裁判について「本人も大いに反省しているようだが、党もこうしたことを他山の石としてしっかり対応していかなくてはならない」と述べた。
 この「他山の石」発言が反響(批判)を呼んでいる。無論これは「他山」ではないからである。

二階氏「党としても他山の石に」Twitterで批判殺到 河井元法相の選挙買収事件で:東京新聞 TOKYO Web


 関係ないが、「カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピックパラリンピック」という3月1日付の記事を読んだ。
 以下、部分引用。

カナダで殆ど報道されず話題にも上らない東京オリンピック・パラリンピック|カナダからの呟き|World Voice|ニューズウィーク日本版

カナダでは東京オリンピックパラリンピックに対する報道はとても少ない。
オリンピック関連のニュースが10あるとすれば、7割は北京オリンピックについて、2割はアスリートについて、 1割が東京オリンピックについてという具合だ。
そもそもオリンピック関連のニュースが少ない。
北京オリンピックが話題に上るのは、オリンピックそのものではなく、カナダ議会が中国政府によるウイグル族への弾圧を「ジェノサイド(虐殺)」だと非難する決議を採択しており、北京オリンピック開催地の変更の要求、またはボイコットの検討をしているからだ。
例の森氏の女性蔑視発言の時は頻繁に多岐に渡って報道されていたが、それを除くと、東京オリンピックパラリンピックはカナダでは殆どニュースにならないし話題にも上らない。

東京オリンピックパラリンピックが報道されない理由は明確である。
全てがuncertain(不確実)であるからである。
報道できる確実なものがないので、報道できないのだ。
さらに報道してしまい、余計な責任を負いたくないという側面もあると思う。
なにせ日本政府もIOCも「開催する」と言っておきながら具体案を提示していない。オリンピックが開催されるか否かもわからず、開催か否かを決定づける新規感染者数などの確固たるベンチマークもない。なので「報道しない」というよりは、「不確かなことばかりで報道する価値がない」のだ。

2月に日本でコロナワクチンのワクチンが開始された時には「日本がコロナワクチンを開始しました。G7では最後の国です。」と報道されていた。『オリンピック開催国なのに最後かよ!』というニュアンスである。開催国でありながら行動の遅い日本にいらついている感じはあるものの、開催するリスクもしないリスクも、所詮、『他国事』である。よって、カナダは東京オリンピックパラリンピックの決定には傍観するつもりでいることが見受けられる。

2020年に「このまま東京オリンピックが2020年に開催されるのであれば参加しない」と最初に正式に表明した国はカナダだった。2020年の3月は新型コロナウイルスの感染対策も対応も見通しが立っていなかった。「アスリートや社会を危険に晒す行動を促す訳にはいかない」という見解であった。カナダに続き、他国も「2020年の夏に開催の場合は不参加」の意を表明し、結果としてオリンピックは2021年に延長された。米国が言い出したら、中国やロシアの反感を買ったであろうし、逆もまたさらなり、である。よって、最初に不参加表明をした国がカナダであったことで他国が追随しやすい道が作られ、日本政府やIOCが延期を発表しやすい環境が作られた訳である。

しかしながら、今回、カナダはこういった表明をしないであろう。1年経ってコロナが沈静化したかというとそうではない。変異種が出てリスク的には1年前とほぼ同じ。 ただ人々の感染予防行動は習慣づけられたので、そこは2020年とは違うところである。 各国が対策方法を持っているし、アスリートにワクチンを優先させるという方法もある(カナダのIOCメンバーがこれを言って大非難を浴びたが、方法としては存在する。但しIOCも日本政府もオリンピックに際してアスリートのコロナワクチン接種は要求してない)。

「安全なオリンピックを」と言いつつも何一つ具体策を明示しない日本政府とIOCに対して、カナダは既に何も期待していないように見える。
<以下略>


 「他山の石」の話題にもどれば、ど真ん中の当事者たる2Fが、河井(裁判)を「他山の石」と言うのは、意味を知らないか、知らばっくれているか、どっちにしても誤った使い方である。他方、カナダの人が日本を「他山の石」としてコロナ対応をすすめたいと言えば、それは正しい使い方である。さらに言えば、日本の子どもたちが2Fほか連日にわたる自民党国会議員の醜悪ぶりを「他山の石」と思うのは、よその国の話ではないにせよ、人間としてきわめて健全かつ望まれるあり方である。




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