ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

忘れちゃいけない 学術会議の任命拒否

 2ヶ月ものあいだ臨時国会の開会要求を無視し続け、10月下旬にやっと始まった「臨時国会」は、今週末の12月5日で閉会を迎える。コロナ感染が底知れぬ拡大状況にある中、会期の延長を求める声をまたしても無視して、である。

 昨日、スガは都の要請を受け、Go toトラベルについては、コロナの重症化リスクの高い65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人は、東京発着の旅行を二週間「自粛」するよう呼びかけるということで合意したという。重症者が増加している事態に、今さらこの対応がどれだけ有効なのか、疑問を持つ人も多い。TVニュースで「一時的にせよ、Go to を止めないと無理でしょう」という街頭の声を拾ったものをいくつも見た。20代とおぼしき人は「Go to から高齢者を外しても若い人がOKだったら、若い人から高齢者に感染してしまうから、意味ないと思う」と述べていたが、利権と沽券(面目)に歪められた今の政府には、こうした当たり前の推測さえも素直に受け入れることが難しい。

 Go to は止めない、絶対に―—この政策判断により「救われない人」が確実に出てくる(出ている)。今のままでこれから年末、年始に向けて感染が“自然に“おさまっていくのだろうか? 年明けには入試も始まる。政府がかりに「万全の対策」をとったとしても、受験生の不安を払しょくできるわけではないのだ。事態は深刻化しているのに、国会を閉じてしまって、国民の不安に向き合わない政治でいいわけがない。

 スガが早く国会を閉じたい理由は、日本学術会議の問題を野ざらしにしていることもあるだろう。国民の関心が薄くなれば、スガ官邸が主導する学術会議の組織改編の必要という線に沿って話を進められる。任命拒否の違法性とか拒否した理由の説明など、さっさと忘れてしまえ、というところだろう。

 作家の平野啓一郎さんが「西日本新聞」のコラムで改めてこの件をとりあげ、「私たちは、日本の民主主義を維持できるかどうかの瀬戸際にいる」と述べている。時間だけが過ぎているが、問題は少しも変わっていないのだと改めて思う。
 11月30日付記事より一部引用する。

【日本学術会議問題】 平野啓一郎さん|【西日本新聞ニュース】


◆民主主義維持の瀬戸際
 日本学術会議会員の任命拒否問題は、日本という「法の支配」下の国にあって、総理大臣が、就任早々、公然と法律に違反し、その後も違法状態が続いている、という前代未聞の出来事である。
 既に670もの学術団体が抗議し、野党が批判し、法律の専門家らが問題を指摘している通り、日本学術会議法は、総理が、学術会議の「推薦に基づいて」、その会員の任命を行うことを定めている。学問の自由を守る観点から、「任命」が形式的なものに過ぎないことは、創設時の公選制から学会推薦制に法改正がなされた1983年の国会でも、当時の中曽根総理らが明言しており、また、2004年に、現行の「コ・オプテーション方式」に再度、法改正がなされた時にも変更はなかった。総理に法的に拒否権はないのである。

    ◆   ◆ 
 菅総理は、18年に極秘に作られた「内部文書」で、推薦された人を総理が必ず任命する「義務があるとまでは言えない」と勝手に法解釈が変更されたことを根拠に適法を主張しているが、そんなことが罷(まか)り通るならば、どんな法律も骨抜きにされてしまう。第一、誰がどう見ても、これは1983年の国会答弁と矛盾しているが、現総理は、法解釈は一貫している、と強弁している。これは最早(もはや)、日本語そのものの破壊である。

 NHKニュースウオッチ9に出演した菅総理は、キャスターから、6人の会員の任命を拒否した理由の説明を求められると、「説明出来ることと、出来ないことってあるんじゃないでしょうか」「105人の人を学術会議が推薦してきたのを、政府が今、追認しろ、と言われるわけですから!」などと、机を叩(たた)く身振(みぶ)りで怒りを露(あら)わにした。異様な光景だった。
 説明は当然、すべきであり、総理に追認せよと命じているのは法律である。従う以外に何があるのか?
 総理は、今回の一件について、「前例踏襲でいいのか」と再三、口にしているが、「前例踏襲」と「法律遵守(じゅんしゅ)」の区別さえつかないとすれば、総理大臣や国会議員の資質を欠くことはおろか、一国民としてもまったく非常識である。区別がついた上で、首相になったからには法律に違反しても構わないと考えているならば、立憲主義法治主義も否定する、恐ろしい、独裁的な政治思想の持ち主である。

<以下略>


 「一事が万事」というが、この任命拒否とGo to の根は同じに映る。



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