ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

言葉の力 カマラ・ハリス氏の演説

 アメリカの次期副大統領となることが確定したカマラ・ハリス氏が、ジョー・バイデン次期大統領に先立って、大統領選の勝利演説をした。どうしても「前座」扱いで、切り取られた一部しか報道されていなかったが、イギリスの月刊誌「ELLE」の全文翻訳ほか、各種の動画もあることがわかった。翻訳者に感謝しつつ、少し加工して引用する無礼をお許し願いたい。

次期副大統領カマラ・ハリス、アメリカ大統領選2020勝利スピーチ【全文訳】

(演説全文)ハリス氏演説「あなた方は民主主義を守った」 「勇気づけられた」とSNSで反響 - 毎日動画


こんばんは。ありがとうございます。
 ジョン・ルイス議員(※1)は亡くなる前に、こう書いていました。「民主主義とは状態(※2 state)のことではなく、行動である」と。つまりアメリカにおける民主主義は保証されているものではなく、その強さは、我々が民主主義のための戦いに向ける意志にかかっているのです。アメリカの民主主義は当たり前のことと、けっして決めつけてはなりません。困難に遭っている時には戦い、守るべきものです。それには犠牲が伴います。でもその戦い、その犠牲のうちには大きな喜びと前進もあるのです。なぜならより良い未来を築く力を持つのは我々一人ひとりなのですから。
 そして女性たち。私達の民主主義、アメリカの魂の行方はこの選挙での投票にかかっていたのです。そして今、全世界が注目する中、あなたたちはアメリカの新たな一日を開いたのです。

【注】
※1 公民権活動の重要人物だった下院議員。2020年7月に亡くなった。
※2 「国家、州」という意味をかけていて、後述される“a nation“に繋がっているとみられる。

 これまでなかったほど多くの人々をこの民主主義のプロセスに導いてくれた私達の選挙活動のスタッフ、ボランティアの皆さん、この素晴らしいチームに感謝します。この勝利を確実なものにするために、全ての票が集計されるべく働いてくださった選挙管理委員会と集計にあたってくださった皆さんに感謝します。我々国民はあなたがたにいくら感謝しても足りません。みなさんが我々の民主主義の高潔さを守ってくださったのです。

 そしてこの美しい国を形づくるアメリカ人の皆様。歴史的な数の人々が投票し、皆さんの声を聞かせてくれました。感謝します。そして、特にこの数カ月間は状況は厳しいものでした。苦しさ、悲しみ、そして痛み。悩みと苦しい戦い……。しかし、私達は皆さんの勇気、立ち直る力、そして寛大な精神をもまた目にしました。
 この4年間、皆さんは公平と正義のために集会を開き、行進しました。私達の命のために、そしてこの惑星のために。そして投票しました。皆さんははっきりとメッセージを発したのです。皆さんは希望、結束、礼節、科学、そして、真実を選んだ。
 皆さんはジョー・バイデンアメリカ合衆国の次期大統領に選んだのです。

 ジョーは経験豊かで頼りになるヒーラー(癒しの人)です。そして人々をひとつにする人。彼は自身が経験した大きな喪失から、ある種の生きる目的を与えられた人です。私達は彼によって国家が失った目的意識を取り戻すことでしょう。大きな心とあふれる愛を持つ人物です。彼の素晴らしい未来のファーストレディ、ジルへの愛。ハンター(息子)とアシュリー(娘)、孫たち、そしてバイデン家全体を愛するように。

 私が初めてジョーを知ったのは彼が副大統領の時でした。(亡くなった息子の)ボー(※3)を愛する父としてでした。ボーは私の親愛なる友人であり、今日ここで私達も彼を思い出しています。私の夫のダグ、そして私達の子どもたち、コールとエラ、妹のマヤと全ての家族の皆、表現できないほど愛しています。
 ジョーとジルが私達一家を彼らの素晴らしい旅路に加えてくれました。感謝にたえません。そして今ここで私が存在するのに最も貢献してくれた母、シャマヤ・ゴーパラン・ハリス。あなたは常に私の心の中にあります。

【注】
※3デラウェア州司法長官。2015年脳腫瘍のために他界

 母シャマヤがインドからアメリカに来たのはまだ19歳の時でした。今このような瞬間が来ることを想像できなかったでしょう。でも、彼女は深く信じていました。アメリカは、このような瞬間が可能な国なのだと。彼女のことを考えると、その世代の女性たちのことを考えます。この国の歴史の道のりをならし、今夜この瞬間を迎えさせてくれた黒人女性、アジア系、白人、ラテン系、ネイティブ・アメリカンの女性たちのことを。
 全ての人に対する平等と自由と正義のために戦い、犠牲を払った女性たち。特に黒人女性たちは往々にして無視されながら、彼女たちこそが我々の民主主義の屋台骨であることを幾度も証明してきました。
1世紀以上も前から投票する権利を獲得し守るために取り組んできた全ての女性たち。100年前の(女性の投票権を認めた)憲法修正第19条、55年前の投票権法、そして今年2020年には新しい世代の女性たちが投票し、自身の声を知らしめる根本的な権利のために戦ってくれました。

 今夜、私は彼女たちの戦いを、決意を、そして、前例から解放されることで、何が得られるのかという皆さんの見通しの確かさに思いを寄せています。私は彼女たちの肩の上に立っているのです。ジョーのキャラクターというものは、この国で実在するうち最も深刻な障壁のひとつを打ち破り、女性を副大統領候補に選ぶことによってはっきりと証明されています。
 私は最初の副大統領かもしれませんが、最後ではありません。なぜなら全ての小さな女の子たちが今晩の様子を見て、この国は可能性の国だということを知るからです。そしてアメリカの子どもたちへ、あなたたちの性別に関わらず、この国ははっきりとこう伝えたのです。大志をもって夢を見よう、確信をもって先導しよう、他の人がこれまで見たことがない自分の姿を思い描こう、そして私たちはあなたたちをたたえ続けるのだと。

 そして、アメリカの皆さんへ。あなたが誰に投票したとしても、私は副大統領として励むつもりです。ジョーがオバマ大統領の副大統領としてそうしたように。忠実に、正直に、常に準備を欠かさず、毎朝皆さんとその家族のことを考えながら目覚める副大統領でありたい。なぜなら、本当の仕事、大変な仕事、やらねばならない仕事、良い仕事、欠かせない仕事が今から始まるからです。このエピデミックを打ち倒すために、命を救う為に絶対必要な仕事、働く人々のために経済を立て直し、司法制度や社会の組織的な人種差別を根絶し、気候危機と戦い、国をまとめ、この国の魂を癒すために。

 これからの道のりは決して容易ではありません。でも、アメリカはその準備ができています。ジョーも私も同じです。私たちが選んだ大統領は、合衆国で最善を体現する代表者です。世界が尊敬し、子どもたちが敬愛し、兵士に敬意を払い、国の安全を保つ最高司令官、そして、全てのアメリカ人のための大統領です。これは私にとって大きな栄誉です。ご紹介します、アメリカ合衆国の次期大統領、ジョー・バイデン


私は(女性として)最初の副大統領かもしれませんが、最後ではありません。なぜなら全ての小さな女の子たちが今晩の様子を見て、この国は可能性の国だということを知るからです。」とハリス氏が述べたとき、テレビカメラは、「ほら、あなたのことを言ってる」とでも小さな娘に話しかける親子連れに向けられていた。幼い子どもたちがこの時のことをずっと覚えているわけではないかもしれない。しかし、何かのきっかけで、「あの時自分は親に連れられて、あの会場にいた」とか、「みんな笑顔で手を振って大歓声だった」とか、情景の一端を思い出すだろう。

ラサール石井さんは11月8日付のtwitter
英語の教科書に載せられそうなスピーチ。こんなの4年ぶりに聞いた。人々に夢と勇気を与えた。「綺麗事だ」「現実は厳しい」と言うな。これでいいのだ。公人はまず理想を述べよ。子供達に希望を示せ。それから実務を現実的にこなせ。
と書いている。
https://twitter.com/lasar141/status/1325394851559428096


 次は日本の子どもたちにも同じものを見せたいものだと思う。



↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村