ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

梶田会長の表敬訪問

 10月16日、日本学術会議梶田隆章会長が官邸でスガ首相と15分程度「会談」した。先に決議された「要望書」(6人を外した理由の説明/速やかに6人を任命する旨)を携えての訪問で、話は当然「6名が外された件」になるはず。ところが、会長によると、要望書は渡したけれども、今回の訪問の主目的は学術会議の今後のあり方についての意見交換をすることだったそうだ。スガの方は「学術会議としてしっかり貢献できるようやってほしい」と会長に要請したと言っている。抗議に行ったのに、「しっかりやれ」と言われて帰ってくる? —— これは表敬訪問なのか? これでは完全に官邸ペースではないか。
 
日刊ゲンダイ10月16日付記事より

【日本学術会議】菅首相と15分会談は何のため? 日本学術会議会長の腰砕け|日刊ゲンダイDIGITAL

<前略>
菅首相に学術会議の総会で了承された任命拒否「撤回」を求める要望書を提出し、約15分の会談を終えた梶田会長。直後の記者団の囲み取材で、菅首相から拒否の理由や経緯の説明があったのかどうかを問われると、こう答えていたから驚いた。
「今日はその点について、特にご回答を求める趣旨ではないので、そこについて明確などうこうということはない。学術会議の決議文はお渡ししたが、未来志向で、学術に基づいて社会や国にどう貢献するかについてお話した」
 いやいや、これでは一体何のために会談したのか。梶田会長は「日本学術会議は政府から独立して学問をベースに発信していく組織であることを譲るべきではない」と話していたはず。そうであれば、学術会議トップとして直接、菅首相に理由を問いただす絶好の機会だったのではないか。「ご回答を求める趣旨ではない」ではないだろう。
「官邸側はこれで『シメシメ』と思っているでしょう。予算委などで野党が学術会議問題を追及しても、菅首相が『いや、梶田会長には理解してもらいましたから』などと逃げることができるからです」(野党担当記者)
「丁寧に説明」といって丁寧に言うだけで説明しない。「会う」と言って会うだけで説明しない。これも安倍前政権から続く「負の継承」なのだろう。

 
内田樹さんTwitterに次のように書いている。2020年10月17日付の投稿より。

https://twitter.com/levinassien/status/1317232650533314561

学術会議問題で新聞からメールで取材があったので、そこに書いたことをそのまま転載しておきます。

——今回の政権の行動の意味するところは?
政権発足と同時に「反対するものは容赦しない」というハードなイメージを国民に誇示する目的で行った「デモンストレーション」的な行動だったと思います。
しかし、学術共同体全体からの予想外に強硬な抵抗に遭遇して、政権発足早々に政策的優先性の特にない日本学術会議問題に政治的リソースを割くことを余儀なくされた。「学者風情は一喝すれば縮み上がる」というふうに考えていた官邸の読みの甘さが露呈した。政治センスがひどく悪いと思います。

—— 今後、総理や政府にはどのような対応が求められるでしょうか。
選択肢は二つしかありません。任命拒否を撤回して、謝罪するか、あくまで任命拒否・説明拒否を貫いて、日本学術会議法違反と、過去の政府の法解釈との齟齬を無視して、学術共同体の抵抗を押し切るか、二つに一つです。
どちらを選択してもスタート直後の政権には大きなダメージになります。官邸は後者を選択するでしょう。長期戦に持ち込み、「学者ヘイト」のデマを組織的に流して民意を混乱させ、メディアが話題に飽きるのを待ち、抗議声明を出した学術団体への公的支援を停止すると脅して「兵糧攻め」にする。
あるいはそれが奏功して、騒ぎは沈静するかも知れません。でも、そのあとに残るのは政府が政権の安定のために、アカデミアを支配しようとする反知性主義に舵を切ったという事実です。
それは日本の学術的発信力・生産力は長期的に取返しのつかない傷をつけることになるでしょう。

 問題が生じたら英知を結集させて解決するのが政治の腕の見せどころのはずだが、その英知を拒絶する国でいいのか、スガさん。



↓ よろしければクリックしていただけると大変励みになります。


社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村