ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

スガさん、地方を大切にしたいって本当?

 人間、発言や行動に首尾一貫性を求められると、ちと辛いものがある。小生の場合、「お前、20年前はこう言ってたじゃないか!」と言われても、そんな昔に言った話を今さら持ち出されても困るよ……である。
 しかし、これは“一般の人”の話ではなく“政治家”についての話である。「風見鶏」とか、「無節操」というのは、政治家にとってはありがたくない「称号」のはずだ。もし、誠実な政治家をきどるなら(誠実でないと公言する政治家など見たことないが!)、その「変節」について釈明があってしかるべきだ。国民は政治家の「言葉」と「行動」を見て一票を投じている。その「言葉」と「行動」がブレてもかまわないし、その説明も必要ないのだったら、何を信用したらよいか、という話になる。

 「自助・共助・公助」のスローガンですっかり有名となったスガ首相にも、政治家として、一国の総理大臣として、過去の「発言」と整合しないことがあるとの指摘がある。
 スガは「自助」をスローガンの第一に据えたように、「成功した自信家」にありがちな新自由主義的な“弱肉強食”の発想がベースにあると思われる。20年ほど前には、地方交付税について「都市で徴収された国税の大部分が地方に投資され……効果は疑問」と「地方交付税制度の見直し」を唱えていた。地方交付税のおかげで自身の地元秋田県の規模の小さな村に小学校が2つ建つことに噛みつくなど、都市の税負担で地方が支えられるのはおかしいと「財政調整(再分配)」には疑問をもっていたようだ。
 さらに、2008年に始まった「ふるさと納税」は、スガの総務大臣当時の肝いりと評され、一見地方の活性化を促したようだが、他方で、「売り」のない地方、「売り」をつくる努力をしない地方は廃れてもやむを得ないと言ってるわけで、やはりここにも“弱肉強食”の発想が垣間見える。これは介護が必要な高齢者に自立や自活を求めるのと同じことだろう。介護は甘やかしだから必要ないということか。努力、努力でどうにかなるレベルを超えている地方が実際にあるのをご存じないのだろうか。
 今、地方は、21世紀に入ってから縮小されてきた地方交付税をもとの形に戻すことを望んでいる。このコロナ禍にあっては切実な問題だ。

 そんな空気を察したか、あるいは石破氏への対抗心か、総裁選のあたりから、スガは「地方分権の推進」を連呼し始めた。選挙のときにだけ掲げる「公約」だから、中身はほとんどないのかもしれないが、首相就任会見でも、「私の中には、一貫して地方を大切にしたい、日本の全ての地方を元気にしたいという気持ちが脈々と流れています」と言われてしまうと、さすがにこれは素直には受け取れない。本気でそう思っているのか。

 「揚げ足」とりをしたいのではない。政治家として「ことば」を大事にする姿勢があるのか、ないのか、それが日本の政治の信用にかかわるという話である。

 9月20日付、東京新聞望月衣塑子氏の記事を引用する。

菅首相の「地方を大切に」は本当ですか? かつては「めざす政治 地方優先の打破」と主張:東京新聞 TOKYO Web


◆国会質問で「問題がある」
 「秋田の農家の長男として生まれた私の中には、一貫して地方を大切にしたい。日本の全ての地方を元気にしたい。こうした気持ちが脈々と流れています。この気持ちを原点として知恵を絞り、政策を行ってきました」
 16日に行われた初の首相会見で、菅首相は熱く語った。
 だが、過去には、地方よりもむしろ選挙区(衆院神奈川2区)の横浜市など大都市を重視する発言をしてきた。2001年6月の衆院決算行政監視委員会で、菅氏はこう質問した。
 「横浜市は平成8年(1996年)の国税徴収額が1兆3千億、(地方交付税交付金などとして)還元されたのが約3000億。しかし、ある県は、国税徴収額が1500億で3500億円も還元されている」。大都市の方が多く税金を納めながら、交付金などが地方に多く還元される制度について「問題がある」と訴えた。

◆ホームページでも「予算配分の見直し」主張
 その主張については、2000年9月ごろの菅氏のホームページに詳しい。「私のめざす政治 『年功序列、地方優先政治の打破』」として、こう厳しく指摘した。
 「皆さんの支払う国税の大部分は地方の道路や施設の投資に使われています。大都市はさまざまな都市問題を抱え、財政も火の車です。世界を捜しても日本しかない地方交付税制度はもう見直さなければいけません」と主張している。
 さらにプロフィル欄では、「都市で徴収された国税の大部分が地方に投資されており、効果にも疑問」と強調。「厳しい財政状況の中で国民の血税が使われるのです。立ち遅れている都市政策を充実させるためには、都市と地方の予算配分の見直しこそが不可欠です」と訴えていた。

◆総裁選の発言の真意は?
 総務省自治税務局長の平嶋彰英氏は地方債課長だった2005年6月21日、議員会館を訪れ、地方交付税制度を説明した際の菅氏の発言を鮮明に覚えているという。
 「私は努力したところがもっと報われるような仕組みでないといけないと思う。そういう意味で交付税制度はおかしい」
 菅氏は、出身地である秋田県の人口3000人ほどの村に、全校50人程度の学校を2つも作った事例を引き合いに「立派な体育館もある。こういうことをやっていける仕組みはおかしいのではないか」と指摘したという。
 平嶋氏が、どこでも義務教育を受けられるようにするために小さな学校もやれる仕組み作りが必要で、そのために交付税制度があると説明したが、納得してもらえなかったという。
 今回の自民党の総裁選で「自助・公助・共助」(ママ)をスローガンに掲げた菅氏。平嶋氏は、「競争を重視する新自由主義的な考えは、当時から垣間見えていた。総裁選で地方の自民党員に人気のある石破茂氏への対抗策なのか『地方分権を』と声高に言い出していることに違和感を感じた。決して地方に優しい人ではない」と分析する。

◆識者「政治家の仕事は公助」
 「菅氏は『自分がたたき上げで、直属の上司をたてながらここまでやってきたんだ』という自負もあり、他者にも同じように強い者に従えということを強いている気がする」と平嶋氏。その上で「コロナ禍で格差拡大が進む中、社会の底辺で苦しんでいる人々にどこまで菅氏が向き合い、公助をするのか。政治家の仕事はそもそも公助だという視点が必要だ」と話した。



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