ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

上川新法相と林検事総長の「因縁」

 今日スガ新内閣が発足し、新法務大臣上川陽子が再任された。法相経験者であり、「実務的に手堅い人選」との見方を真に受けていたが(恥ずかしい……)、調べてみると、2年ほど前、上川氏と林眞琴・検事総長との間には「因縁の過去」があったらしい。とすれば、今回の閣僚人事はスガ政権が検察人事への介入(ないし報復)をあきらめていないことを示唆している。「アベ政治の継承」はこういうところにも現れているわけで、アベが去っても警戒を怠れない。

<9月17日 追記>
 ……と言ってるそばから、もう始まった。
上川法相「再提出検討」 定年延長の検察庁法改正案 | 共同通信
 上川陽子法相は16日夜の就任記者会見で、通常国会でいったん廃案となった、検察官の定年延長を可能とする検察庁法改正案について「改正部分にさまざまな意見があったと承知している。それを踏まえ、関係省庁と協議し、再提出に向けて検討したい」と語った。通常国会に提出した改正案は、国民から大きな批判を浴びた経緯があり、修正を図った上で再提出を目指すとみられる。

 当時の『法と経済のジャーナル』2018年1月18日付、村山治氏の「事件記者の目 上川法相が林刑事局長の次官昇格を拒否か、検事総長人事は?」より引用する。

上川法相が林刑事局長の次官昇格を拒否か、検事総長人事は? - 法と経済のジャーナル Asahi Judiciary


 法務省の事務方ナンバー2の林真琴・刑事局長が1月9日付で、名古屋高検検事長に転出した。林氏は、官邸の意向で2度にわたり事務次官昇格が延期されてきた。今回は官邸も容認する方向だったとされるが、上川陽子法相の強い意向で転出が決まった模様だ。次の次の検事総長人事にも微妙な影響を与えそうだ。

 ◇3階級特進

 政府は先月26日の閣議で、名古屋高検検事長に林真琴・法務省刑事局長(司法修習35期)……を充てる人事を決めた。……。
 名古屋高検検事長は、検察の序列では、検事総長、東京、大阪高検検事長に次ぐナンバー4のポストだ。初めて検事長になるときは、より小さな格下の高検に配されることが多い。林氏の場合は、事務次官を飛び越しての3階級特進だった、といえる。
 林氏は法務省刑事局総務課長、官房人事課長など同省の本流を歩み、「法務・検察のプリンス」と目されてきた。法務省としては、次の次の検事総長への就任を射程に入れた人事だったとみられる。
 しかし、当の林氏には、法務事務次官として人事改革など法務行政を刷新したいという思いがあったとされ、不本意な異動だったようだ。元検察首脳の一部は、林氏が辞職するのでは、と心配したが、林氏は異動を受け入れた。

 ◇「3度目の正直」はならず

 法務・検察幹部が描く人事構想がくるい始めたのは、2016年夏だ。
 当時の法務・検察の首脳らは、検事総長を、西川克行氏(現検事総長、当時は東京高検検事長、31期)、稲田伸夫氏(現東京高検検事長、当時は法務事務次官、33期)、林氏(当時も法務省刑事局長)の順番でつなぎたいと考えていた。
 林氏の同期には黒川弘務氏(当時は法務省官房長、35期)がおり、そのキャリアや実力は林氏と双璧とみられていた。法務・検察幹部は「林氏が検事総長候補の最右翼」と内外にアピールする意味も込め、2016年夏時点で林氏を事務次官に登用する人事を立案した。
 ところが、事務次官だった稲田氏が、自分の後任への林刑事局長の昇格と、黒川氏の地方の高検検事長への転出を織り込んだ人事原案を固め、官邸側と折衝したところ、官邸側は、法務省官房長として法案や予算などの根回しで功績のあった黒川氏を事務次官に登用するよう求め、法務・検察側は、受け入れた。
 その際、法務省幹部らは「黒川次官の任期は1年で、必ず林氏に交代させる」との「約束」が官邸との間でできた、と受け止めた。ところが、1年後の2017年夏、官邸は、黒川事務次官の続投を求め、法務・検察は衝撃を受けた。
 とはいえ、14年5月末以降、中央省庁の幹部候補600人の人事は、内閣人事局官房長官のもとで一元管理し、各省庁の局長以上の幹部候補者名簿を作成し、首相や各大臣が協議して決定することになっている。検察という独立性を要求される組織を抱える法務省といえども、逆らうわけにはいかない。半年後の異動で、林氏の次官昇格を目指すことで再び刑事局長留任を受け入れた。

 ◇伏兵は法相だった

 2度あることが3度あっては一大事と、法務省は黒川次官以下が、今回の異動では、黒川氏を地方の検事長に転出させ、林氏を次官に昇格させる方針で、官邸に周到な根回しを行った。
 さすがに、官邸も、今回は、林氏の次官昇格を容認したとされるが、意外な伏兵がいた。上川陽子法相だ。法相は、法務・検察幹部の人事権を持つ。国際仲裁センターの日本誘致の方針をめぐる意見の相違などを理由に林氏を次官に登用するのを拒んだとされる。一部には、再度、林氏の留任を、との話もあったようだが、最終的に、上川法相が菅義偉官房長官と直談判し、林氏を地方に転出させる人事を決めたという。
 法務大臣が、官邸まで認めた事務方の人事案に横やりを入れるのは極めて珍しい。そのため、法務省内外で、林氏が事務次官になりたくて猟官運動をしたとか、林氏個人に大臣に対する失礼があり、それで嫌われたのでは、などの噂も流れたようだ。そういう事実はない。今回の人事は、あくまで、政治の側の都合によるものだ。菅氏と上川氏は密室でどういう話をしたのか。その内容は、漏れてこない

<以下略>

太字・下線  は当方が施したもの。





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