ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

「敗軍」の宰相 何も語らず 

 ロシアで7月24日、7月4日に公布された改正憲法を受けて連邦法改正案が可決され、「領土の一体性の侵害」につながる行為を違法な「過激行為」として処罰することとなった。法改正におけるロシア政府の主たる関心はクリミア半島にあるが、日ロ平和条約締結後、日本に引き渡されることを警戒してきた歯舞群島色丹島のロシア人住民にとっては、大きな法的保護を得たかたちだ。
 アベ政権はこの間のロシアの動きについて一切コメントしていないが、それは「静観」ではなく「黙認」と受け止められる。1956年の日ソ共同宣言からでも60年余。平和条約締結と領土問題解決のため、これまで人的交流を通じた対話と交渉を積み重ねてきたが、こと領土問題に関しては、今後一切俎上に上らなくなるだろう。長い間、領土返還に取り組んできた関係者にとっては、ロシアの動き云々より、日本政府のノーコメントの姿勢の方が許しがたいのではなかろうか。

 以下、朝日新聞7月25日付配信記事からの引用である。(※ 太字下線は当方が施したもの)

「夢を見たければ勝手に」ロシア、北方領土交渉にまた壁:朝日新聞デジタル

 ……法改正は、4日に公布された改正憲法に「領土の割譲禁止」が明記されたのを受けて行われた。領土の割譲に向けた行為をテロや人種間の憎悪の扇動などと同列に位置づける内容で、明確な違法行為とした。
 現行刑法では、こうした行為の呼びかけには最大で禁錮4年の刑が科される。さらに、議会には領土割譲に向けた具体的な行為に最大10年の禁錮刑を科すなどの刑法改正案も提出されており、秋にも審議される。
 日ロ両政府は2018年、平和条約の締結後、歯舞群島色丹島を日本に引き渡すと規定した1956年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速すると合意している。改正憲法の領土割譲の禁止規定には「国境の再画定は例外」とのただし書きもあり北方領土交渉に余地を残した形になっていた。だが、議会では「例外」は日ロ交渉には適用されないとの見解が示され、ボロジン下院議長は「南クリル(北方領土のロシア側呼称)問題は終わりだ。夢を見て期待しても無駄だ」と言い放つなど、交渉は完全な打ち切りムードだ。
 憲法に領土の割譲禁止を掲げたのは、ロシアが併合したクリミア半島の返還を求めるウクライナや欧州に対抗する姿勢を示し、政権の求心力を高めるためだとされる。ただ、プーチン氏の支持率はコロナ禍で過去最低レベルに低迷しており、領土問題で日本に譲歩する余力は無いのも実情だ。
 ロシア外務省も、「平和条約交渉と国境画定交渉は何の関係もない」(ザハロワ報道官)と領土問題から距離を置く姿勢を強めている。モスクワのシンクタンク「政治情報センター」のアレクセイ・ムヒン所長は「改憲が交渉の外部環境に与える影響は大きく、日本にとって状況は格段に厳しくなっている」と指摘する。
……以下略。



社会・経済ランキング
にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 政治ブログ 政治・社会問題へ
にほんブログ村