ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

森永卓郎さんの提言

 「のら猫寛兵衛」さんのブログを毎回楽しみにしている。その中で先回と今回続けて、ラジオ番組*での森永卓郎さん(経済アナリスト 獨協大学)の話が引用・紹介されていた。元音声にあたってみると実に興味深い内容だった。森永さんによると、現在コロナの第二波が来ているかもしれないのに、コロナと経済の両立などという中途半端なことをしていたら日本は破滅に向かってしまう、もう一度東京とその近郊の自粛のやり直しが必要だと。しかし、こうした意見を言うと、マスコミから干されてしまうのだという。しかし、これは文字に起こす価値のある内容だと思う。以下に内容をダイジェストで掲載し、「干される」べき内容か否か、読者諸氏の判断を仰ぎたいと思う(なお、見出しは小生が施した)。音声の方がよろしい方は、以下のアドレスをクリックしていただきたい。
 * 文化放送で平日午後に放送されている「大竹まことゴールデンラジオ!」の6月29日「大竹紳士交遊録」。毎週月曜日のゲストは森永さん。

https://20943.mc.tritondigital.com/OMNY_PROGRAM20_P/media-session/f0d5da2d-c632-462d-8bfb-126b3a8753d2/d/clips/92f07af0-df9c-498e-a68a-ab4201477bd9/cc7bb0cd-402d-4fac-8c34-ab43007fb47f/d849b7a2-0d4a-4643-a32d-abe90082d526/audio/direct/t1593417501/6_29_(_).mp3

ニュージーランドのリスナーからのメール 
 先週の放送を聞いたニュージーランドのウエリントンの女性から直接メールをいただきました。「森永さんがラジオの中で、ニュージーランドのコロナ対策についてお話しされてるのを聞いて、そのとおりだと、うれしくなりました。ご存じのとおり、ニュージーランドは国内感染の封じ込めに成功しました。6月9日から世間は通常に戻っています。日本のコロナ対策を外から観察していて思うのですが、日本はニュージーランドと同じ島国で、よく似ているので、もしかしたら、初めての感染者が出た時点で国境を閉じていれば国内感染は防げたかもしれません。経済の流れを止めない感染対策をとったスウェーデンでは、経営者の自殺や歳入の30パーセント減など、経済的打撃は避けられず、感染者や死亡者の数もかなりの数にのぼっています。
 結局、政府が優先したいものは何か。つまり、その国の『主義』のようなものが、今回のこの出来事で浮き彫りになっているのだと思います。コロナ感染(ウィルス?)を抹消することが不可能ならば、ともに生きていかなければなりません。そのために、国民にかかるストレスは最小限に抑えられていくことが必要です。ニュージーランドでは人々がストレス・フリーでいられるので、そのぶん活動にも力を入れられます。首相のジャシンダ・アダーンがロックダウンを宣言したとき、経済の流れを止めたくない与党からバッシングを受けました。そのとき彼女は『経済をつくり出すのは人間です。人間の安全が確証されてないと経済の復興はありません。』と発言しました。これには深くうなずきました。」
と書かれているんですね。
専門家会議と政府の誤り
 私はここのところ日本はおかしいと思うんです。明らかに第二波が来ているのにもかかわらず、誰もそれを認めない。小池都知事も政府も、「医療体制がしっかりしているから大丈夫だ」、「夜の街が原因だから大丈夫だ」と言い続けてるんですけれども、私はこんなことをやってると、破滅の道を進んでしまうという気がしてしかたがないんです。
 6月26日にアメリカの感染者数が一日4万5千人を超えました。実はこれ過去最多なんですね。一旦終息しかかってたのに、また急激に増えてきている。これは対岸の火事ではなく、日本も全国ベースだと100何人程度、東京都だと5,60人というすごい数になっています。にもかかわらず、西村経済再生担当大臣は「方向性を変えることはない」、つまり自粛は求めない、県を越える移動も自由だと言って、6月24日には、日本のコロナ対策をリードしてきた専門家会議を突然廃止するという決断までしました。
 表向きは別組織に衣替えだと言ってますが、現実にはクビを切られたんだと思う。確かにこの専門家会議が失敗をしたのは間違いない。政府は4月7日に七都府県に対する緊急事態宣言を出しましたが、その時に、人と人との接触を7割、できれば8割削減するよう求めました。ところが、専門家会議が実際の感染日に基づいて推計した新規感染者数のグラフを見ると、日本の感染者数は3月28日にピークアウトしていて、緊急事態宣言を出した4月7日には、実は半分くらいに減っていたんです。この8割の根拠をつくった北海道大学の西浦教授が批判されましたが、私は「西浦モデル」は実はすごく古典的でシンプルなものだと思っています。要は、「基本再生産数」、つまり一人の感染者が何人にうつすかという数字なんですが、西浦教授は2.5、つまり一人で2.5人にうつるという数字から8割削減を打ち出したんです。この「基本再生産数」は1を超えると感染がどんどん拡大していく。逆に1を切れば、別に放っておいても終息していくだろうということなんです。で、2.5というのはドイツ並みということで、今から振り返ると、日本とかオセアニアはコロナ耐性が強いので、ヨーロッパ並みの「基本再生産数」になるはずがなかったんですが、西浦教授は、当時ほとんどPCR検査をせず、データがなかったため、とりあえずデータのそろっているドイツのものを参考にしたわけで、それは間違いだったんですけど、しかたがなかったんです。
もう一度東京圏の封じ込めを
 3月28日になぜピークアウトしたのかという理由については、まずひとつは、この「基本再生産数」が日本で見ると、1を切ってた可能性がある。もうひとつは、専門家会議では全く議論されなかったけれど、志村ケンさんが亡くなった3月29日、国民はものすごいショックを受け、みんなが自粛を始めたというのも大きかったかなと思うんです。そういう問題は政府では一切議論されなかった。でも、さらにもうひとつ重要なことは、何人にうつすかという「基本再生産数」が、都道府県によって大きくちがうということが最近分かってきた。「基本再生産数」というのは理論上の数字で、実際に観測するときは瞬間風速みたいなものしか計測できませんが、東洋経済というところが今毎日、「実効再生産数」という、観測された「基本再生産数」に近いものを公表しています。これを見ると、びっくりすることに、6月に入ってから安定して1を超えているのは実は東京都だけなんです。他の県は1を切っている。最近で言うと、たとえば埼玉県や神奈川県は、また1を超えてますが、これは東京由来で感染が拡大しているためで、移動を自由化したら東京に引っ張られるに決まっているわけです。
 だから、私は、今からでもかまわないから、もう一回やろうよ。全国規模ではやるお金がない、自粛を補償するお金がないというのであれば、東京都だけを手厚くやって休業補償をするというのをもう一回考えた方がいいんじゃないかと思うんです。でも、これを言うと、真っ先に干されるんです(笑)。特に東京を封じ込めるというのはすごく皆さんいやがる。だけど、数字を見てください。6割は東京なんです。その周りに現在どんどん広がっているという状況を見たら、あるいは、東京の場合は一人が1人以上にうつすというのがわかってるんだから、ここを放置したら、日本は破滅に向かうと私は思うんです。
(森永さんがおっしゃるように今東京近郊の感染者数は徐々に増え続けていますよね。以前、あのような状態が起きたときに、自粛を要請するかどうかは別として、政府や小池都知事は非常に厳しい警戒の発言を続けていましたが、今は第二波ではないとか、あるいは自粛要請をするつもりはないとか、あとは県境をまたいでの移動の自粛を要請するつもりはないとか、みんな安心して経済活動してくださいというメッセージを発しているように聞こてしまうんですけど、そこだけでもせめて警戒してくださいというアピールをすることは重要かなと思うんですが……)
 結局政府も東京都も、経済再開に前のめりになってるんですね。彼らが共通して言うのは、コロナと共存する、コロナと経済の両立をはかるとずっと言ってるんですけど、私は「二兎を追うものは一兎をも得ず」という格言どおり、まずコロナを終息させてから経済を元に戻すというのが順序だと思うんですね。

 今日7月5日、小池都知事の再選が決まったこの日、新型コロナウィルス感染者数は東京都が111人、13都道府県と空港検疫を合わせた合計は207人となった。



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