ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

イージス・アショア撤回、なぜ?

 6月15日に突然河野防衛相がイージス・アショアの配備計画“停止”を発表した。そのこと自体に異議はないが、ブースター、ブースターと言われても、納得のいく理由の説明にはなっていない。なぜ、今? しかも、アベ首相でなく河野防衛相から(河野の独断でやってるワケがない)。「何があるのだろうか」とネットで調べても、それらしい記事には出会えなかった。
 それから一週間後、水島朝穂さんのホームページを訪問したら、最新記事でこの件について触れている。それでも納得度は7、8割だが、一部引用させていただく。

平和憲法のメッセージ

 「トランプ・安倍」コンビによる、米国製兵器「爆買い」が加速度的に進んでいることへの危惧は、与党内からも出てくるようになった。2017年11月の安倍訪米の際、トランプは、「非常に重要なのは、日本が膨大な兵器を追加で買うことだ。・・・米国に雇用、日本に安全をもたらす」と、本音むきだしで語っていた……。安倍官邸がトランプとつるんで、次々に高額兵器を買い急ぐなか、さすが自民党国防部会のメンバー(防衛大臣経験者を含む)からも批判の声があがった。同年12月12日午前8時の国防部会(自民党本部1階101会議室)では、地上配備型イージスシステム(イージス・アショア…)の導入について質問が相次ぎ、「どこで決まったのか」という野次まで飛んだという……。
 イージス・アショアは本当に日本の「防衛」に必要なのかについては、『軍事研究』誌にもこれを疑問視する論稿が掲載されている。「高額兵器」の購入の方法についても重大な疑問がある。……、これら超高額兵器の「爆買い」には、「対外有償軍事援助」(FMS: Foreign Military Sales)が適用される。「援助」は誤訳で、「売り込み」(セール)である。米国から「言い値」で、しかも納期もすべて米国政府まかせ、日本に圧倒的不利な条件である。安倍政権下の2015年度からFMS調達が急激に増加して、2019年度は7013億円に達している。
 ……こんな装備がなぜ日本に必要なのかという検討が十分行われないまま、導入だけは「スピード感」をもって決まった……。単価も当初は1基800億円だったものが、レーダーLMSSR搭載で1340億円となり、2基購入で2679億円となり、2020年現在では4500億円に跳ね上がっている。
 イージス・アショアの配備地が秋田県山口県に最初から決まっているのもおかしい。……、その理由は、秋田配備の「イージス・アショア」はハワイの米軍基地に向かう弾道ミサイルを日本上空で迎撃し、山口配備のそれはグァムの米軍基地に向かうものを迎撃する。日本防衛のためでなく、米太平洋軍の拠点を防御するのを日本国民の税金でやろうというのである。まさに「亡国のイージス・アショア」である。
 ところが先週、突然、河野防衛大臣がイージス・アショア計画の停止を発表したのである。……この問題についてスクープを連発して世論を動かしてきた『秋田魁新報』の一面トップは一段と鮮やかだ。この段階で、はっきりと「首相了解」と大見出しを入れている。河野大臣の口から停止の理由が説明されたのだが、これまた驚いた。山口配備の場合、迎撃ミサイルを打ち上げた際に切り離す推進装置「ブースター」が市民生活の場に落下する可能性があるというのだ。それまでの説明とまったく違う。もっといえば、こういう理由で計画全体を停止するのは、私でも不自然だと思う。河野大臣は「コストと期間に鑑みて、イージス・アショアを配備するプロセスを停止し、国家安全保障会議防衛省として報告をして議論をいただいて、その後の対応を考えていきたいと思う」(『朝日新聞』6月16日付)と語ったが、河野大臣だけの判断で、これだけの計画の停止を決断できるとは思えない。米国市民のデモにまで軍を投入しようとしたトランプの暴走により、政府のなかに、トランプへの過度の迎合と忖度を続けることのリスクとデメリットが大きいという判断が生まれてきたからではないか。

 コロナ禍をきっかけに目に見える財政難に直面して無駄遣いを見直すことにした、というのは一見「正論」だが、他方で、現下の危機に際しても、支援給付事業の電通丸投げとか、「Go to キャンペーン」とか、無駄遣いをやめる気配が全くないこの政権のやることである。しかも、トランプ政権に相談もせずにこんなことは決められるわけがない(代わりに別のものを買うから……とか、約束しているかもしれない)。ただ、この件、アベではなく河野が発表した理由だけは想像できる。アベはこの件で質問を受けたくないし、責任の追及もされたくない。防衛大臣なんだからお前がやれと、河野に丸投げして逃げたというところか。
 しかし、財政難云々が問題なら、辺野古の件だって見直しできるはずだ。これは、水島さんどころか、自民党中谷元・元防衛大臣も言及している:6月15日、「十数年、1兆円かかる。完成までに国際情勢は変わっている」と普天間基地辺野古移設の不合理性を指摘。
 確かに政権の求心力は落ちているようだ。カンフル剤でまた解散総選挙が画策されているようだが、悪あがきせず早々に退陣することを強く願う。<追記部分あり>



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