ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

黒川辞任 森留任

 今回の黒川弘務氏の辞任の件で、またしても出てきた「責任」という言葉。日本語として使われる「責任」は意味があいまいだから、英語を参考に意味を整理するとよいという話があった。小生からすると、これを口にする人間があいまいにして責任を回避していることが第一の問題だと思うのだが、頭の整理にはなるので、新味はないが、調べた内容を以下にまとめてみる。

 「責任」には、英語で言うと2つないし3つの意味合いがあるとのこと(➁と③は「結果責任」で一括りにすることもあるようだが……)。
Responsibility 遂行責任
 =適切な判断・決定をもって任務(役割・使命)を果たすこと。
Accountability 説明責任
 =適切な結果を出し、結果について説明・報告をすること。
Liability 賠償責任
 =適切な結果が出せず損害が生じた場合、賠償などの法的な義務を果たすこと。

 たとえば、警察のトップに任命されたAが、自分の友達のBがCに暴行した件を見逃してBを逮捕しないようにと指示したとする(遂行責任放棄)。後から、この事実が判明したが、Aはこの件については「適正」だと言い続ける(説明責任放棄)。……で、逮捕も起訴もされなかったBだが、CがBに対して民事訴訟を起こしたら、Bに対しCへの賠償を命じる判決が出されることに……。
 Aが警察のトップに任命されたばかりに、当然の逮捕も犯罪行為の立件もされず、CはBから受けた暴行被害に加え大きな苦痛を味わうことになった。これは、C個人にかぎらず成員全体の、社会や人間に対する失望や不信につながり、ひいては人間相互の信頼に基礎づけられた社会システムを破壊しかねない行為となる(大げさではなく、人間同士の一定の信頼関係がなかったら社会システムは成り立たない)。さらに、システムを破壊しかねないAに警察トップとしての報酬を与えることは、Aの行為を追認することであり、Aがその地位にあることはシステム自体の毀損、財の喪失ともなるだろう(賠償責任放棄)

 黒川氏の辞任について、安倍晋三首相は「法務省検察庁の人事案を内閣として認めたもので、責任は私にある。批判は真摯に受け止めたい」と述べたとのこと。相変わらずの言いぐさで、「だから、何?」である。責任の“有無”など誰も問うていないのだから……。上の「3つの責任」で言えば、この件で安倍氏は「遂行責任」を果たしていなければ、「説明責任」も果たしていない。黒川氏の任期を閣議決定などという“変則的”(“違法”)な方法で延長し、この間彼に報酬を与え続けただけでなく、ふつうに退職金も付けたとなれば、国庫(国民)に損害を与えたことになり、「賠償責任」にも反している。上のAと同様、社会システムの前提となる成員全体の信頼関係を損ねているという意味で重大である

 一方、森まさこ法務大臣は、責任を痛感して、昨晩、安倍首相に進退伺(辞表ではない)を出したが、強く慰留され、「辛い道ではあるが、できることをしてまいりたい」と述べたとのこと。森氏も賭けマージャンでもしなければ辞めさせてもらえないのだろうか? 一刻も早く「泥船」から逃げ出したかったのに……。

※あとから追記(補足・訂正・追加)した箇所あり。


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