ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

内閣・党役員人事より調査と決別を!

 安倍氏殺害事件をきっかけに、統一教会がこの国の政治、とりわけ自民党の中枢に深く関与していることがわかってきました。「関与」というより「(マインド)コントロール」と言ってもよいような深刻な状況に思えます。端からはそう見えるのですが、中にいれば空気と同じで、存在の大きさをそれと自覚できないのではないか、という疑いさえもちます。

 共産党が行った旧統一協会問題追及チームの第3回会合の切り取り動画(8月4日付)を眺めていたら、2015年は大きな「分水嶺」だったという話をしています。

https://twitter.com/snc20165/status/1555833867616935936
※全編は以下(53分過ぎから)
旧統一協会と自民党の関係「明らかな組織性」指摘 2022.8.4 - YouTube

 発言者:……私は、今ね、ピースをはめていくというお話をされたので、特に思うんですけど、森友・加計問題以来、ずっと安倍政権を追及してきてですね、2015年っていう年は、ひとつの、まあ何て言うか、象徴的な年なんですよ。つまり、安倍さんが、それまでの自民党ともちがう、「悪魔と契約」するような道に踏み込んだ年なんですね。森友で言うと、その年に安倍昭恵さんが塚本の幼稚園に行って名誉校長に就任して、一瀉千里に悪い方向に舵を切ると。加計で言うと、それまでは(獣医学部の新設など)「そんなのは認められない」と言っていたのが、内閣府で決定されて、(文科省とは)別の道で認可する方向に走り始めると。そして、極めつけは9月の、私たちが「戦争法」と呼ぶ安保法制なわけですよ。ですから、もう従来の生やさしい保守政治じゃダメで、もうやることは全部やると。この力をつかって政治をねじ曲げるのも、何もかもやると、いうところへ踏み込んだ時であって、その時に、この問題もですね、もう長年の懸案になってた(統一教会の)名称変更も、下村を通じてやってしまえと。こういう大きな流れがあったのではないか。2015年というのはひとつのキーワードではないかというふうに見てるんですけど、そのあたりはどのようにお考えですか?

 鈴木エイト氏:確かにうかがって、そうだなと思いますよね。その流れで言うと、さっき冒頭で言ったような、SEALDsに対抗する学生組織(「国際勝共連合 大学生遊説隊 UNITE」。鈴木氏の調べでは、統一教会の2世信者の学生たちの組織。2016年1月結成)が生まれた背景とか、それも合致するんですね。(野党共闘で)共産党が初めて脅威になったってことと同時に、その流れで見ると、この名称変更も、政権なりが関与したとしたら、何かここまで協力してくれたご褒美として与えた程度の認識ではなかったのかなと思いますね。たいしたことではないと思っていたと。……そのあたり、2015年のそのときが確かに分水嶺であったかもしれないですね。

 1987年の朝日新聞阪神支局襲撃事件は、統一教会の教祖の指示だった疑いが濃厚だという詳細なブログも見ました。
朝日新聞襲撃事件(1987年)と同時期に文教祖は朝日新聞を攻撃するように幹部に指示していた | ちゃぬの裏韓国日記

 警察が、オウムの次は統一教会だと言っていたのに、政治の力で急に捜査が止まったという話を、有田芳生・元参院議員やジャーナリストの青木理氏ほか、何人かの人がされています。オウム教団は警察庁長官を狙撃するなど、国家権力にたてついた、けれども、統一教会は政治家に巧みに取り入った、そのおかげで、捜査対象から外されたように見えます。統一教会もオウムと同じような問題を抱えていたのだから、同じように捜査し、対処すべきだったはずです。青木氏は昨日のTBS「サンデーモーニング」で、1990年代に警察と行政が実態解明に動き、しかるべき対応をしていたら、統一教会の被害拡大も、名称変更も、そして、安倍氏の殺害事件も起こらなかったかもしれない、という話をしていました。
https://twitter.com/tktetsu2/status/1556151561151123456

 自民党の総裁で、かつ日本国内閣総理大臣の岸田氏が今やるべきことは、統一教会と日本の政治の癒着を明らかにし、これと決別することだと思います。平議員ではあるまいし「私は関係ありません」では済みませんし、閣僚や自民党の役員など、いくら顔ぶれを替えても、統一教会と今後とも付き合っていくというなら、普通の国民は納得しないでしょう。ましてや、安倍氏国葬など、くさいものにフタをしたいだけだと、ますます多くの人は思うでしょう。
岸田総理「私個人は旧統一教会と関係ない」“内閣改造”の方針に言及(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース

 国民は今は騒いでいてもどうせそのうちに忘れる――かどうか、我々もまたためされていると思います。




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統一教会元信者の証言

 昨日TBS「報道特集」を見ました。統一教会の元信者が実名・顔出しで取材に応じる、その決意と姿勢に、メディアも視聴者も応えなければいけないと思いました。動画がありましたので、文字に起こしてみます(※元信者の名前はイニシャルにしました)。

「昔から自民党を応援するように」元信者が証言 1990年代から続く旧統一教会の政治家への選挙協力 “貯金を全てゼロ”にしても止められない献金の実態【報道特集】|TBS NEWS DIG - YouTube

 日下部統一教会の方から(選挙で)誰かを応援しなさいとか、運動に参加しなさいみたいなことになったんですか?
 元信者Iさん:婦人の集会のときかな、やっぱり教会に候補者が来まして、それ(その人)を応援しましょうというふうに言われたことはありました。市長選でしたけれども。……昔から自民党を応援するように言われてました。

 元信者Yさん:選挙事務所の人たちから、この人たちに(電話を)かけてと名簿を配られて、その方々に片っ端から……。
 日下部:無報酬で?
 Yさん:無報酬です。
 日下部:どのくらいの量をかけたんですか?
 Yさん:もう紙に何十人、何百人と(名前が)書いてありますから。それを私だけでなく、他の信者たちも(選挙事務所に)行ってますから、どのくらいかけているかわからないです。

(1992年 統一教会が世間で話題になったとき)
 Yさん:マスコミがわあっと取り上げていたとき、(合同結婚式とか)霊感商法とかでわあわあ騒がれているときに、どこどこの放送局にみんな電話してーって。批判の無言電話。
 日下部:無言電話って、何度も何度もかけ直すものなんですか?
 Yさん:何度もかけます。……とにかく抗議の電話だから、かけられたら何回もかけます。
朝日新聞1992年8月26日付記事:「統一教会」批判番組後、TBSに無言電話3万本)

 Yさん:マスコミに出て、統一教会のことを悪く言う人はみんなサタンだと。弁護士の方とか出てましたけど、もう顔を見るだけで気持ちが悪くて。マスコミに出ている方だけではなくて、統一教会に反対する人はみんなサタンなんですけどね。

霊感商法献金について)
 Yさん:もう2000万円以上。絵が100万だとか、呉服が80万だとか。統一教会で売っているそういうものも、天から見たら光り輝いているって言われるんですね。だから、高額なんですけど、それは他の人にはわからない価値があると。ただ、(統一教会を)辞めたあとで、もう(買った品の)始末をしたくて、絵画を画廊に持って行ったんですよ。そうしたら粗悪品だと言われました。100万のものが、結局額縁代しか値がつかなくて5000円でした。

 Iさん献金が次々にやってきます。この献金が終わらないうちにこの献金、次の献金…。私は、これはもう死んで霊界に行っても献金のノルマに追われるなと思ってました。
 日下部:総額でどのくらいになるんですか?
 Iさん:私は500万弱だと思います。子どもたちの保険とか、学資保険とか自分の年金保険とか、全部解約しました。(子供が)お小遣いを貯めているじゃないですか、お年玉とか。それも全部ゼロにしました。ゼロにしろって(言われた)ときがあったんです。
 日下部:向こうから言われて?
 Iさん:はい。全部、私は貯金通帳をゼロにしました。郵便局も普通の都市銀のも。……借金してでも献金しなきゃと思わされちゃうので。だからと言って、やめられない。
 日下部:それはなぜですかね?
 Iさん:それは霊界というか、脅されていましたね。恐怖は感じていました。夫や子どもに災いがあると思ってましたから。

 Iさんの夫(非信者):家庭自体は普通です。まったく普通ですね。ただ、統一教会反対とか、お金のことになると、非常に険悪な状態になって表情も変わってしまう。お金があれば献金してしまうので、お金は最小限のかたちで私も生活費を渡すんですけど、生活がどんどん貧相になってしまうんですね。お母さん、今日おかずこれだけ? みたいな。子どもたちによく言われたんですけど、それくらいマインドコントロールの怖さを今回の問題で非常に認識したんですけどね。
 日下部:いろいろお話をうかがってきたわけですけども、最後にこれだけは言っておきたいということは、何ですか?
 Iさん:こうやって(インタビューに)応じることは、私としてはすごく恥ずかしい。本当はね、人前に出たくないですよ。穴があったら入りたいくらいなんですけど、今回この件があって、とにかく統一教会、こんな詐欺団体を宗教法人と認めちゃいけない。ぶっ潰したいです。

 最後の言葉には、反省する元信者の怒りと恨みと、悲しみの深さを感じます。
 かたや、国会はもう閉じられ、次は内閣改造の前倒しだと。こちらの「教団」は、今後もまだまだ事実と向きあわず、隠蔽と誤魔化しを続けるつもりのようです。焦りつつ……。




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1945年8月6日朝「経験の大きな黒い塊」

 今日は短く。2008年に亡くなった加藤周一さんが1945年8月6日の後の広島を回想した文章です。

 広島には一本の緑の樹さえもなかった。見渡すかぎり瓦礫の野原が拡がり、その平坦な表面を縦横の道路と掘割の水が区切っていた。石造の建物がいくつか、崩れ落ちずに立っていたが、その窓は破れ、壁は半ば崩れて、近づくと建物を透して向こう側の青空が見えた。人の住むことのできる家は一軒もなく、しかし、その焼け野原には影のようにいつも誰かが彷っていた。国民服の男の埃に汚れた顔は、放心して現ないようにみえた。子供たちの顔は、火傷の瘢痕にひきつり、髪の抜けた女は、風呂敷で頬かぶりをして、太陽の下を逃げるように歩いていた。爆心から遠く破壊を免れた郊外の病院には、まだ病人があふれていて、歯ぐきを腫らし、傷口から膿を流し、高熱に昼も夜も苦しんでいた。それが二ヵ月前までは広島市民であった人々の生きのこりであった。
 一九四五年八月六日の朝まで、そこには、広島市があり、爆撃を受けなかった城下町の軒並みがあり、何万もの家庭があって、身のまわりの小さなよろこびや悲しみや後悔や希望があったのだ。その朝突然、広島市は消えて失くなり、市街の中心部に住んでいた人々の大部分は、崩れた家の下敷きになり、掘割にとびこんで溺れ、爆風に叩きつけられて、その場で死んだ。生きのびた人々は、空を蔽う黒煙と地に逆まく火焔の間を郊外へ向かって逃れようとして、あるいは途中で倒れ、あるいは安全な場所に辿り着くと同時に死んだ。さらに生きのびた人々も、田舎の親類家族と抱合い、九死に一生を得たよろこびを頒つと思う間もなく三週間か四週間の後には、髪の毛を失い、鼻や口から血を流し、やがて高熱を発して、医療の手もまわらぬままで死んでいった。それから二ヵ月、辛うじて難を免れた人々は、親兄弟を失って呆然とし、みずからも「原爆症」の恐怖に怯えて、追いたてられた獣のように、あてもなく焼け野原を歩いていた。もはやそれは嘗ての広島市民とは別の人間であり、あたかもそのことが無かったかのように、彼らが以前の人間にたち戻ることはできないだろうと思われた。
 みずからその経験を通ってきた人たちは、どうしてもその話をしたがらなかった。「ここでは≪ピカドン≫といってますけどねえ、生きた心地もしなくて……」といったまま、口をつぐんでしまう。そういうときほど、相手と私自身との間に、私が超え難い無限の距離を感じたことはなかった。経験の大きな黒い塊が、相手の人間のまん中に、動かすべからざるものとしてあり、しかし当人さえもそれを言葉であらわすことができなかったとすれば、どうして私にそれを理解することができたろうか。理解を越えたもの、すなわちそこから意味を抽きだした瞬間に、その意味の直ちにいろ褪せるもの、しかしそれと向きあっている限り人間の全体を抗し難く規定してやまぬもの……私はそれを経験しなかった。しかし経験した人々は見たのである。広島についてのすべての言葉は、それがどれほど納得できるものであっても、聞く度に私に「ああ、それはちがう、どこかがちがう」という気をおこさせた。私のなかの何かが、「その通りだが、しかしそれだけではないだろう」と呟いた。あの≪ノー・モア・ヒロシマ≫という言葉でさえもがだ。私は広島を見たときに、将来の核兵器については何も考えていなかった。後になって、核兵器についても考えるようになったが、そういう私自身の考えと、広島の人々を沈黙させた経験との間に横たわる遙かに遠い距離を、私はいつもくり返して想い出したのである。……
加藤周一『続・羊の歌』 12-14頁)

 77年前の8月6日朝とその後の出来事を、当事者でない者が語っても、加藤さんが言うように「経験の大きな黒い塊」に迫ることはできず、最後は沈黙するしかなくなるでしょう。でも、「完全」に迫れずとも、50点でも30点でも迫れればいいやと考えれば、沈黙せず何かしら語れることはあるかも知れません。そういう意思だけは、あきらめ悪く持っていようと思っています。

 一年前に書いたものですが、こちらもお読みくだされば幸いです。
8月6日 の「断章」 - ペンは剣よりも強く




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