ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

時事スガ川柳 五輪編

 オリンピック開催のさなか、国内にも選手村にもコロナ感染が急拡大し医療現場を逼迫させている。経験したことのない暑さに苦慮する選手も多い。東京五輪への懐疑と危機感を押し流すかのような(押し流したい?)五輪報道があふれかえっているが、そんな中でも、人々の批判精神が健在なのには励まされる(笑う)。

 7月19日付朝日新聞の「素粒子」に「五輪カタカナ語辞典」なるものが載っている。
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14980075.html?iref=pc_ss_date_article

 〇アンダーコントロール:誇大広告と希望的観測に基づく招致の根拠。いまや「信
   頼性欠如」とほぼ同義語に。
 〇エンブレム:「盗作疑惑」と対をなす言葉。「ケチのつき始め」の意味もある。
 〇マリオ:日本PRの定番だが、扮装した政治家は拍手とともに、失笑を買った。
 〇バブル:割れやすい泡のこと。選手らを外部と隔てる効果には疑問符が次々に。

 Dr.ナイフさんが7月25日付のTwitterに上げている「拾いものの画像」も笑える。

Dr.ナイフ on Twitter: "面白い!
拾い物の画像だけど、いったい誰が作ったの?… "


 しかし、やはり川柳がおもしろい。先週の「朝日川柳」から五輪関係のものをいくつか拾ってみた。

7月24日 山丘春朗選
 ・式典の屋根にぽっかり0(ゼロ)浮かぶ   (兵庫県 野田さん)
 ・会長の仕事あらかたお詫(わ)びなり    (神奈川県石井さん)
 ・楽な道見向きもしないたたき上げ      (東京都 尾根沢さん)
 ・いましたねナチに学べと言った人      (静岡県 増田さん)
 ・本当に要らない人は辞任せず        (愛知県 原野さん)

7月23日 山丘春朗選
 ・あの人もこの人も消え開会式        (大阪府 清水さん)
 ・やめるのは楽と大見得(おおみえ)切って見せ(東京都 三井さん)
 ・新聞もページめくれば二枚舌        (長野県 志波さん)
 ・その次の獲物決定ブリスベン        (大阪府 角田さん)

 
7月22日 西木空人選
 ・非を詫(わ)びる脇で言い訳事務総長    (神奈川県 堀口さん)
 ・これまでと愛想をつかす旦那衆       (埼玉県 中村さん)

7月21日 西木空人選
 ・一波二波三四五波で五輪来た        (香川県 桑島さん)
 ・開幕やふと玉砕の語が浮かぶ        (福岡県 吉原さん)

7月20日 西木空人選
 ・菅さんと五輪支持率仲が良い        (千葉県 安延さん)
 ・広島はなるのでしょうか免罪符       (兵庫県 野々口さん)
 ・おもてなしただしVIPに限ります     (京都府 高橋さん)
 ・かくなれば古関マーチをリバイバル     (大阪府 井上さん)


 ・「東洋の魔女」はスガの「消耗品」? 
 ・金メダル獲るのは選手国じゃない
 ・「おもてなし」実は衆知の「人でなし」   (千葉県 黒竜江人)
  いつもお粗末…。


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東京五輪の開会式のこと

 東京五輪の開会式。小生は少ししか見ていないのだが、総じて評判があまり芳しくない。昨日出先で会った人は酷評していて、NHKの紅白歌合戦ばりのノリでつくられたものを見せられているような感じだと言っていた。昨夜TBSの番組「新・情報7daysニュースキャスター」に出演したビートたけしも、「外国、恥ずかしくて行けないよ。本音はそうでしょ、あれ、すばらしかったですか?」とにべもなかった。
 しかしながら、直前までドタバタが続いて、開会式自体をやれるかどうかもわからない中、各パートを演じた人たちの心中は察するにあまりある。子どもたちも違法に夜中まで駆り出されて…。

 そんな中、文春が今回の開会式の演出をめぐる「内幕」を暴く記事を配信した。

 当初開会式の演出を統括するはずだったのは振付演出家のMIKIKO氏だった。彼女は昨年役を下ろされ、電通のCMクリエイター、佐々木宏氏が統括役へと代わった。…しかし、その佐々木氏は今年の春、例の侮蔑発言が問題となって辞任することになる。昨年のプレゼン段階ではMIKIKO氏の演出案は評判がよかったと言われている。それなのにどうして彼女は外されたのか。そこにはまたしても森喜朗組織委員会電通の影を見ることになる。

〈東京五輪開会式の闇〉「このやり方を繰り返す怖さ」「日本は終わってしまう…」 女性演出家MIKIKO氏を“排除” した「電通五輪」 | 文春オンライン
森・菅・小池の五輪開会式“口利きリスト” 白鵬、海老蔵、後援者… | 週刊文春 電子版

 文春の有料記事は、「有料」といっても高額ではないのだが、フタガワカサラさんのTweetを読んで済ませてしまった。昨日の連続投稿から一部借用をお許し願いたい。

https://twitter.com/FutagawaKasara/status/1418661354521587712

当初のMIKIKO案のオリンピック開会式ってどんなだったんだろうな~って調べるために有料記事読んでみたら、なんであんな一貫性のない演出になったかの答え合わせが全部書いてあってワロタ、いや笑えねえ… 政治VSクリエイターじゃん。今年の3月には全部決まってたんだな

端的に言うと、森元が懇意にしてる海老蔵を入れてくれとか百合子の支援団体の江戸消防記念会を参加させろと要望出してきて、演出路線に沿わないMIKIKO電通が排除して言うこと聞く演出家を据えた、みたいなことが今年の前半に行われましたって書いてあります。実現しちゃったね…

オリンピック開会式の演出が統一感なくてなんかちぐはぐなの、多分派閥とか利害の対立があるんだろうなとなんとなく思ってたけどとっくの昔に答え合わせされてるとは思わなかったよ。
……
悲しくなってきたな… 関係者みんなダメダメだったんじゃなくちゃんとできるチームが揃ってたのにしょうもない人間につぶされてしまった顛末がここまで克明にわかってしまうと…

これは政治の話題以上にこの国で活動するクリエーターの未来の話だよ こんな悲劇を繰り返してはいけない
……
途中に挟まった、一見意味がわからない森山未來コンテンポラリーダンスはこの開会式にたどりつ<ママ>までに排除されてきたクリエイター達の無念の表れがその一端にあると理解を得た。
……
この開会式がいいところもあれば最悪につまらなかったところもあったのは衰退の現れとかではない。どうしようもない人々とクリエイターの戦いがあり、倒れた人もいれば生き残った人もいてその結果が現れた。そして「膿」は何なのかが明確になった。そういうことなんだと思う。

 コンサルティング会社代表の安川新一郎氏も、7月24日付のブログで、MIKIKO氏が統括役から外された事情に触れている。

モヤッとする翌日、東京オリンピック2020開会式が露呈したもの、僕たちはそれらを噛み締めて前を向いていかないといけない|安川新一郎 (インパクト投資家、未来思考「構造と文脈で世界とその未来はシンプルに理解できる」)

気心の知れた偉いおじさん仲間で仕事を回す
 開会式の演出チームは、解散辞任が続き混乱が続いた。
 組織委員会の体質に愛想を尽かして辞めていった人は多い。エンブレム問題の処理にあたり、改革チームを率いていた豊田章男氏が、根深い組織委員会の体質に見切りをつけたのは5年以上前だ。
 現場の組織委員会関係者も認める、様々な「天の声」による現場への介入。
真相は、もちろんわからない。
 昨年の6月に開会式演出チームの3人目の執行責任者としてアサインされたMIKIKO氏が、同年の秋ごろから本人の意向確認なしに静かに外された。後からその事実を知った本人が抗議の上、11月に辞任をしている。

 電通の)社命を背負っている高田は、次第に、現場を管理・監督するようになり、MIKIKOを排除し、佐々木を全面に出していく。昨年11月、彼女は辞表を提出することになるのだが、その前の10月16日に、自らに降りかかった出来事を克明に記したメールを電通幹部に送っていたそうだ。そこには、「高田さんより、『今までの労いと共に、佐々木さん体制の報告を会長の口から受ける』と伺ってトリトンに出向く」とある。そこで森会長はこう告げたという。「引き続き、オリ開会式はMIKIKOさんにお願いしたい」。佐々木体制への変更を覆すような発言をしたというのである。同席していた高田は、訝る彼女を別室に連れて行って驚くべき発言をした。「森会長はボケているから、今の話は事実と違うから」と、佐々木体制で行くと念押しされたそうだ。電通幹部の説明だと、森会長はMIKIKOの能力そのものは買っていた。だが高田は、佐々木ならば意のままに動かせるし、電通の利益にも適うから、森発言をなかったことにする必要があったというのである。

〈去年の6月に執行責任を任命され、全ての責任を負う覚悟でやってきました。/どんな理不尽なことがあっても、言い訳をしないでやってきました。それを一番近くで見てきたみなさんはどのような気持ちでこの進め方をされているのでしょうか?/(略)でも、またこのやり方を繰り返していることの怖さを私は訴えていかないと本当に日本は終わってしまうと思い、書きました〉(MIKIKO氏 電通関係者10名へのメール)

 このやり方、というのは、おそらく現場不在で、一部の上層部の意向でコンテンツを作っていくやり方、そして怖さとは心あり才能あるクリエイターが、忸怩たる思いで、去っていく状況を指すと思われる。

「もし時間が巻き戻せるなら、このコロナ禍のセレモニーで、何を伝えるのか、何が出来るのかを全員で話したかった」オリンピック・パラリンピックのプロジェクトをサポートして下さっていたある尊敬するスタッフの方の言葉です。(MIKIKO 3/26 ツイッター

MIKIKO氏の演出で「新しい世代の日本の世界観」を出し切ったほうが、グローバルには共感を生んだはず。
<以下略 引用終わり>

追補で、東京新聞7月23日付記事も付す。
「天の声」に翻弄された開会式…組織委関係者が語る「五輪の闇」 :東京新聞 TOKYO Web

 ひどい話だ。しかし、この「どうしようもない人々」を「悪役」に仕立てても、すべて解決というわけにはいかないと思う。五輪組織委員会は、今、「どうしようもない人々」の重鎮、森喜朗組織委員会の「名誉最高顧問」にするつもりだという。これには、当たり前だが、官邸でさえ反対している。これほどの暴挙を組織委員会が平気で通そうとするのは、多くの悪事を、許し、黙り、忘れてくれる国民の「おかげ」なのだ。これに怒りもしない国民がもう一度開会式をやり直し、改めて「新しい世代の日本の世界観」なるものを発信したとしても、世界の共感は得られないだろう。



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手を組むヒトラー 腕を組むスガ 

 毎朝仏壇にご飯とお茶を供え、母親の写真を拝む。葬儀で写真が必要になったとき、母親は笑顔で写っている写真が少なかったので、探すのに苦労したが、葬儀屋さんがそれらしく仕上げてくれてありがたかった。以後、ずっとこの写真が母親の「基本的」肖像となるわけだから、笑顔で写っている方が断然いい。
 しかし、不思議なことに、笑顔で写っているはずなのに、拝んでいる側が「笑顔」でないと、母親が笑っているように見えないことがある。そういうときには思い直して「気持ち」を入れ替え、再度手を合わせるのだが、毎朝拝みながらこの〝関係性〟について考えさせられる。
 いくら今は一般の人でも好き勝手に写真を加工修整できる時代になったとはいえ、この〝関係性〟までは加工修整できない。まして、写された人間の内面などはとうてい変えられない。たまにしかるべき人が写すと、被写体の内面を透視するような画を映し出してしまうことがあって、やはり写真には怖いところがあると思う。

 大昔に『歴史写真のトリック 政治権力と情報操作』(アラン・ジョベール著 朝日新聞社、1989年)という本を眺めていたら、ヒトラースターリン毛沢東らが写っている元写真にどのような修整が加えられたかをつぶさに解説していて大変興味深く思ったことがある。今本箱の奥から引っ張り出して開いてみると、たとえば、63頁に、ヒトラーが首相になる前にヒンデンブルク大統領と二人で写った写真がある。眼光鋭く威厳ある現職の大統領を横に、ヒトラーの方は手を前に組み、ややかしこまった感じで写っている(この段階ではまだヒトラーは首相になっていない)。ヒンデンブルクは当時絶大な人気があったから、その人気にあやかりたいと思ったのだろう。ヒトラー(のお抱え技師)はこの写真にいろいろな加工を施して宣伝用ポスターに作り替えている。ヒンデンブルクと目線の高さをそろえ、二人の間を詰める。緊張して上向き気味のヒトラーの顔を下げて真正面を見据えさせ、上半身だけを切り取り、組んだ手を見せない(説明するより写真を見た方が早いので、興味のある方は下記を参照)。

https://ghdi.ghi-dc.org/sub_image.cfm?image_id=1872
https://www.icp.org/browse/archive/objects/poster-of-president-paul-von-hindenburg-and-chancellor-adolf-hitler-der

 もちろん修整を施そうと思うのは為政者本人とは限らないし、多くの場合、直接指示するのはその取り巻き達だろう。しかし、為政者本人も、知っていれば「完成版」を見せろと言うかも知れない。
 何でも段取り通りに事が進まないと気に入らないスガ首相の場合、自分が写っている写真をどう見ているのだろうか。

 スガ首相は7月20日アメリカの「ウォールストリート・ジャーナル」のインタヴューに応じた。宮武領さんのブログに7月21日付のその記事が引用されている。
菅総理がWSJ誌に「東京五輪をやめるのは一番簡単なこと。挑戦するのが政府の仕事」と啖呵。簡単ならリスクのある五輪はすぐにやめて、もっと価値あることに挑戦せよ。【安倍逮捕とか、麻生・二階解任とかwww】 - Everyone says I love you !
 「五輪をやめることは簡単だ」発言が物議を醸した記事だ。途中前触れもなく、なぜか三浦瑠麗氏の太鼓持ち発言が出てきたりして、新聞社と官邸との共演合作を疑わせるが、それはともかく、問題は、スガ首相が腕を組んだ姿を写した写真である。フォトジャーナリストの深田志穂氏が撮影したと思われるこの写真、上述の「修整」話を念頭に眺めると、いくつか感じることがある。

 腕を組んだ構図は威厳をもたせるための常套手段だろう。背景を黒にするのも同様だ。しかし、これとて被写体次第のところがある。
 インタヴュー中のスガの言葉を拾ってみると、空疎な言葉が目を引く。
 〇「ワクチン(接種)も進んで、感染対策を厳しくやっているので、(オリンピックを開催する)環境はそろっている、準備はできている」
 〇「(オリンピックを)やめることは一番簡単なこと、楽なことだ」「挑戦するのが政府の役割だ」
 〇「日本は手を挙げて、日本でオリンピックをやりたいと招致してきた」「(IOCから)押し付けられるようなことだったら、跳ね返す」

 
 「日本国民の約3分の2は、五輪を楽しめるとは思っていないと回答していますが…」と話を向けられると、スガは、競技が始まり、国民がテレビで観戦すれば、考えも変わるとして自信を示した、という。しかし、これは本当に「自信」がある人の表情なのだろうか?
 感染対策は実は全然厳しいものでない(開会式があった昨日は、選手村でPCR検査キッドが足らなくなったようで、オーストラリアは自前でPCR検査をすることにしたらしい)。「挑戦」などという語がつい口から出てしまったが、おこがましいのは本人が一番わかっているのではないか…。これでは、写真で腕を組もうが、背景を黒くしようが、「威厳」につながるはずもない。

 「一月万冊」で清水有高さんと佐藤章さんは、スガ首相は「空疎」だと言っていた。

東京五輪強行開催&コロナ大拡散!「五輪中止を止めたのは私」と菅総理の恐怖の自白。国民の命を奪う五輪開始。そこに天皇を引きずり出す・・・元朝日新聞記者ジャーナリスト佐藤章さんと一月万冊 - YouTube

 清水菅さん、責任とれるんですかねえ? 何人もオリンピックを中止にした方がいいと進言してきたけど、私はそれを突っぱねたんだと。「挑戦」するって言うけど、どうやってリスクをとるんだろう。そもそも「成功する」とはどういうことを言ってるのか、結局何もない、空っぽの精神論ではないかと思うんですね。
 佐藤その通りですね。安倍さんのときからそうなんだけど、安倍さんとか、菅さんとか、三浦瑠璃さんとか、共通しているのはそこなんですよ。空っぽな精神論なんですよ。言葉が全部空っぽ。何にもないんですよ、内実を見ると…。先ほどね、菅さんのインタヴューの言葉を掘り下げてみましたけど、たとえば、ワクチン(接種)が進み、感染対策も深くやっているので…と言ってますよね。でも、本当にそうなのか、というと、全然ちがいますよね。…内実は何もない。でも、言葉自体はかっこいい。たとえば、安倍さんは「人類がコロナ・ウィルスに打ち勝った証として東京五輪を開こうじゃありませんか!」と言ったけど、これも、内実は何もない。勝つためには努力が必要なのに、そのウィルス対策のために何をやったのかって、ほとんど何もないんですよ。

 そう言われると、腕を組んで映っている写真のスガの表情には、内面から滲み出るような自信はますます見えない。撮影した深田氏はもちろんだが、周囲の者も十分承知していたことではなかろうか。時間が限られているとはいえ、「修整」できるものなら威厳ある「まともな写真」にしたいと考えたのではないか。でも、結局そういう写真を写すことはできなかったし、「修整」する時間もなかったと見える。スガはこれでいいと思ったのか。

 フランスのジャーナリスト、西村カリンさんは「段取り上手なはずの日本はどこへ行ってしまったのか」と述べている。これには上の写真の話に通底するものを感じた。7月22日付毎日新聞の記事より。

「安心安全」って何? 仏紙記者が見た五輪開幕直前の日本 | 毎日新聞

「私も羽田空港でコロナ対策を取材しましたが、がっかりしました。ルールをちゃんと決定して徹底すれば、それほど問題ないかもしれないと思っていました。むしろ日本らしい完璧なやり方を(フランスの人たちに)見せようと思って取材に行ったんですね。それが全く逆で、信じられないという気持ちでした」
 流ちょうな日本語でそう語る西村さんは、かれこれ日本在住約20年になるジャーナリストだ。もともと旅行で訪れたことをきっかけに日本を気に入り、仕事と生活の拠点をパリから移した。……
 一人の生活者として、「日本は本当に住みやすい国」と西村さんは話す。何ごともシステマチックで、先々を見据えた段取りの徹底。その根底にある勤勉で真面目な国民性……。こうした良さを日々肌で感じているだけに、ことオリンピックを巡る対応には首をかしげることが多いという。それは何も、空港の件に限ったことではない。

……
 何よりも疑問なのが、五輪に関係する菅首相らキーパーソンたちが判で押したように「安心安全」を連呼しながら、肝心要の根拠が一向に示されないことだ。西村さんが出席した最近の記者会見でも、禅問答のようなやり取りになることが少なくないという。例えば大会組織委の橋本聖子会長は6月11日の記者会見で、「安全は何なのかということが明確に発信できない限り、安心にはならない。安全であるんだということが組織委から国民にしっかり伝わらない限り、安心にならない」と述べた。かと思えば、日本オリンピック委員会JOC)の山下泰裕会長は同28日、「『安全安心』というのは大会組織委で定義されているわけではない」。結局のところ彼らが何をもって「安心安全」を判断しているのか。それが依然としてはっきりしないと言う。
 「意味がよく分からないんですよね。記事に使いにくい言い方です。逆に基準がないから、いくらでも言えてしまうんだと思います。開催に賛成する人たちは『安全安心』だと言い張り、反対する人たちは『安心安全ではない』となってしまう」。そしてこれが、大会への賛否に直結している。だからこそ求められるのは、基準の明確化とはっきりした説明だという。「賛成する人も反対する人も、どちらも安心安全とは何かを分からないままになっています。どこまでなら許せるのか、選手村に感染者が出ても本当に安心なのか。(菅首相らが)そこを説明しない限り、納得できない人が多いと思います」

……
 日本が好きだからこそ、西村さんは残念でならない。「いつも準備や管理が完璧なイメージが日本にはありますが、今回は明らかにそうではありません。らしくない部分が目立っています。批判ばかり、ネガティブな情報ばかり言っていると思われるかもしれないけど、私はそうしたいわけじゃないんです。現実を見るとそうなっちゃうんです」
 
 総理大臣が国民に肩車されて大通りを進むようなシーンは映画かドラマのようだが、もし、そんなことが起こりうる国なら、スガ首相の腕組み写真の表情はもっとちがっていたかも知れない――まあ、それは空想が過ぎるというものだが…。



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